聖域なき改革を実行のTDK 成長の鍵は適所適材とフライング

新型コロナが拡大した昨年、いち早くグローバルで特別警戒態勢を敷き、社員の働き方も含めて柔軟に適応した結果、売上を伸ばしたTDK。石黒社長はコロナがもたらした変化を好機と捉え、社内の「聖域なき改革」に着手した。何を改革し、どんな未来を見据えているのか、石黒氏に尋ねた。

石黒 成直(TDK株式会社 代表取締役社長)

コロナを社内改革のチャンスに

各界が新型コロナの影響で少なからず打撃を被った2020年度、電子部品大手のTDKは売上を上方修正し、営業利益は1100億円、前期比12.4%増を見込む。同社は昨年1月、日本企業の中でもいち早くグローバルで特別警戒態勢を敷き、日本のオフィスも在宅勤務にシフト。研究職も在宅勤務できる柔軟な体制でコロナ禍に適応した。なぜ、パンデミックという不測の事態にスピーディーに対応し、成長を持続できたのか。

「当社では2018年に、完全な在宅勤務ができるようにコアタイムなしのフレックスタイム制を導入していました。また、暗号化されたVPN回線も十分に用意していました。新型コロナは予期できませんでしたが、元々あったルールを応用して対応しました。備えあれば患いなしと、改めて感じました」と石黒社長はその背景を明かす。

石黒氏は、今回のコロナ禍でテクノロジーの力を実感したという。

「出勤せずに仕事ができるという、ほんの10年前には考えられなかったこの変化はテクノロジーの進化がもたらしたものです。当社ではビフォーコロナとは大きく変化した現在を『新定常状態』と定義しました。そして、これを聖域なき改革を推進するチャンスと捉え、昨年6月には社内に『新定常状態タスクフォース』を作り、若手や中堅社員をメンバーに抜擢しました」

改革の鍵は多様性とスピード感

改革の目玉は人事制度だ。そこには、同社に入社してからの40年間で、17年におよぶ海外勤務を経験した石黒氏の危機感がある。日本には、年功序列に代表される独自の人事制度がいまだに残るが、石黒氏は「日本型人事は大きな課題。この仕組みをグローバルスタンダードに合わせないと、日本に優秀な人材が来なくなる」と指摘する。

「人事制度改革の命題はいかに優秀な人材を必要とされるポジションに充てるか。世界の優秀な人材を、必要なところに配置する適所適材が大切です。そのためには人事もダイナミックに行うべきです。目指すのはグループ全体が一つの仕組みで動くことです」

石黒氏が重視するのは、多様性とスピード感だ。世界に散らばる子会社、関連会社の事業責任者を集めて研修をすると、彼らはあっという間に横のつながりを作り、本社に伺いを立てることなくどんどんビジネスの話を進めていく。外国人のマネジメント層の意思決定のスピードと行動力、これをやると決めた時のダイナミズムには目を見張るものがあるという。

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