2021年2月号
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事業を構想し実践する「ビジネスデザイン」

リコーからカーブアウト 360度カメラで映像体験革命を起こす

生方 秀直(ベクノス代表取締役CEO)

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日本の大企業からイノベーションが生まれない中、既存事業の一部分を戦略的に切り出し、社外事業として独立させる手法「カーブアウト」の動きが出てきた。2019年にリコーから独立し、360度カメラを手掛けるベクノスについて、生方秀直代表取締役CEOに聞いた。

文・矢島進二 日本デザイン振興会 理事

 

リコーは2017年に山下良則新社長が就任し、翌年、新しい成長戦略を発表。従前のように全ての事業を自社内で包含するのではなく、積極的にオープンイノベーションを推進するために外部経営資源の取り入れやカーブアウトを加速したり、新規事業の種をコア事業とは異なるプロセスで事業化する“イノベーション特区”を導入することを打ち出した。カーブアウトの成果の一つが今回紹介する「ベクノス」だ。

「大企業にある多くの規定や管理方法などは、新規事業創出でブレーキになる場合があります。リコーは光学やシステム技術が得意で競争優位性の源泉にしていますが、例えばエンターテインメント分野は得意ではありません。その要素を取り入れようとすると、人材も資金も時間も必要となってしまう。事業の種はリコー本体にあっても、花を開かすのは、本体から切り出した方が適していると判断したのです」と、経営陣へのカーブアウト提言から実行までを担った生方秀直氏(ベクノス代表取締役CEO)は話す。

生方 秀直 ベクノス代表取締役CEO

「私は1989年に入社した当時から、新しいものづくりに関わる業務に就きたいと思っていました。営業職を経て念願の商品企画部に異動し、一時期はデザインセンターに在籍し、クリエティブなデザイナーと組んで、事業部に対するビジネス支援などを行っていました。その後、2000年からは経営企画部に移り、経営戦略と経営管理を担当してきました」

当時の社長はコンシューマ事業を伸ばすために「クロスファンクショナルチーム」をつくり、コンシューマ領域で唯一残っていたカメラ事業のテコ入れを考え、2つの方向性を策定した。一つはカメラ事業そのものの拡張で、2つ目はカメラ的な事業基盤を活用した新事業の創造だ。生方氏は後者のリーダーの命を受け、2010年に“360度(全天球)カメラ”を提案した。

世界初の全天球カメラを開発

ここから誕生したのが、世界初の全天球撮影専用デジタルカメラ「THETA」だ。生方氏は言う。「私はカメラそのものではなく、新しい映像体験を創出し、カメラ業界をルールチェンジしたかったのです。当時はTwitterやスマートフォンが流行・普及し始めた頃で、画像をリアルタイムで共有する新しいビジュアルコミュニケーションが生まれ始めていました。関係ない人が見たらどうでもいい写真でも、仲間うちで見ると意味をもち価値がある。“目的はコミュニケーションで写真は手段”だと気づいたのです。これをスマートフォンが実現したので、“次”は、場の状況や空間全部を伝達し共有するコミュニケーションスタイルを提示すべきと考えました」

体験の提供が目的であるため、THETAはプロダクト・ウェブサービス・アプリまで一体のサービスとしてリリースした。その後、同時多発的に、ドイツ・カナダ・フランスからも類する製品が登場し、市場が形成されていく。さらに韓国の大手メーカーや中国のスタートアップも参入、生方氏の目論見通り、360度映像体験は世界中に広がった。

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