2020年12月号

ビッグデータを地域経済の再生に活かす

V-RESASで考える〇割経済

宇野 雄哉(内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局 参事官補佐)

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地域経済分析システム(RESAS:リーサス)は、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部が提供する、ビジュアライズされた地域データベースで、これまで自治体や地域企業等に活用されてきた。V-RESASは、コロナ禍において正確かつ速く高頻度に地域単位のデータを把握するために、新たにリリースされた。同事務局より寄稿いただいた。

新型コロナウイルス感染症の影響で、経済が大きく変動している。2月から景気が翳(かげ)り始め、緊急事態宣言のあった4~5月頃に景況が大きく悪化し、7月以降は持ち直しつつある、というのが大方の見方だろう。しかし、地域や業種業態によって影響の大きさや回復速度は異なる。正確な判断には、正確な根拠が必要だ。政府統計はそのために最も重要なものだが、多くの場合、公表のタイミングが遅い、頻度が低い、地域単位が粗い、といった欠点を持つ。

経済が急速に大きく変動する状況では、素早く、高頻度に状況を把握するためのデータが必要になる。また、地域で状況が異なる場合、なるべく細かい地域単位のデータが必要だ。そこで内閣府と内閣官房が6月30日にリリースしたのがV-RESASである。

V-RESASは民間企業から提供を受けた様々なデータを、リアルタイムに近い形で、前年比を中心に表示するもので、Webブラウザで誰でも無料で見ることができる。執筆時点(9月末)でのデータの種類やその地域単位、時間単位は表のとおりである。なお、随時、改善をしており、今後はデータの追加(企業財務、求人、POSの品目)、地域単位の細分化(ナウキャストの両データを都道府県単位に)等を検討している。

現在掲載されているデータ

※ 掲載されるデータは、個社情報・個人情報の秘匿の観点を踏まえつつ、今後さらに細分化していくことを検討。

出典:内閣官房まち・ひと・しごと創生本部

 

各データの見方のポイントを簡単に説明する。

新型コロナの経済への影響のうち最も本質的なことは、外出、特に遠出がしづらくなったことだろう。幅広い産業が人出の影響を受けるので、「人流」の動向の理解は重要だ。執筆時点では、市区町村内に留まっている人、都道府県内の他の市区町村から来た人、他の都道府県から来た人の数を見られるので、まずはここから経済の動向を考えること勧めたい。

次に経済の全体像の把握に役立つのが、「消費」だ。決済データでは、小売業8系列とサービス業9系列を見ることができる。5月頃にはEC(電子商取引)への転換が叫ばれたが、足下ではやや落ち着きつつあり、リアル店舗の需要がどれくらい戻るか、といったことを考えるのにも使えるだろう。POSデータでは、GMS、スーパーマーケットの品目ごとの売上動向を見ることができる。これらは基本的にtoC産業のデータだが、川上にいる卸売業や製造業にも関係があることなので、幅広い産業の分析に使えると思う。

新型コロナで悪影響を受けた代表例と言える業種のデータも掲載している。「飲食」ならジャンル別、「宿泊」なら宿泊者の分類別・予約代表者の居住地別、「イベント」ならジャンル別と、一歩踏み込んだ分析も可能だ。

「興味・関心」は、キーワード検索のユーザー数の動向を示すものだ。旅行がGoToトラベルキャンペーン開始前の7月中旬に一時的に減少幅が改善する、ゲームが5月の連休頃をピークに増えて足下では減少に転じる、といったことが分かる。やや先行指標になっているはずなので、マーケティング等に使えるだろう。

V-RESASの目的は、公共政策や企業戦略を立案する方やそのサポートをする方に、日本経済・地域経済の状況を適時適切に把握していただくことで、意思決定の精度の改善や合意形成を行うことだ。

4~5月、7~8月の感染者数の増大の時期と、分析したい業種・地域のデータを照らし合わせれば、人々の心理の変化や政策の動向が実体経済に与える影響を分析することができ、仮に冬以降に感染者が増加しても、その影響を予測することができる。また、遠からず新しいデータが掲載されるため、その予測の検証と軌道修正をすることができ、公共政策であれば補正予算の規模や政策メニューの判断材料にできるし、企業戦略であれば事業規模の拡大・縮小やマーケティングの意思決定に反映させられるだろう。

出典:内閣官房まち・ひと・しごと創生本部 V-RESAS

 

また、自社と自地域、自地域と全国・都道府県・他地域などの比較により、自分の立ち位置を知ることができる。例えば、他と比較して回復が遅れているようであれば、KPIを高めに設定し、そのための改善努力をする必要があると考えられる。

筆者がより重要と考えるのは合意形成だ。新型コロナ下で、各種補助金・給付金の執行や制度融資で、地方公共団体、金融機関、商工団体等の地域のプレイヤーが連携する局面が増えている。そうした中でこの事態をどう乗り切り、コロナ後にどのような地域経済を作っていくか、ビジョンを共有することは非常に重要だ。一時期、「7割経済」という言葉が流行ったが、V-RESASを見れば、業種業態・地域・時期によって何割経済かが大きく異なるのは一目瞭然だ。例えば観光産業の規模が〇割になる場合、単純に考えれば、宿泊施設が安定的に事業を営むには「①事業所数を〇割に減少させる」か、「②事業者あたりの売上が〇割に減少しても黒字が出る仕組みを作る」かの2つの方向性があり、実際はこの間のどこかが落としどころになるだろう。この「〇割」が8割か6割かで、地域経済へのインパクトは大きく異なり、また、①から②のどこを目指すかで補助金や融資、経営指導の在り方も変わるはずだ。こうしたビジョンがないまま連携しても、場当たり的な対応にしかならない。V-RESASには予測は載っていないが、地域のプレイヤーがビジョンを議論するための最良の材料の1つになると思う。

残念ながら、V-RESASをうまく使いこなせている地域はまだ多くない。上記は抽象的な説明に留まったが、より具体的な利用事例を共有できれば、それを参考にしたい地域はたくさん出てくるはずだ。もしこの記事を読まれた方がV-RESASを意思決定の参考としてお使いいただけたなら、皆でこの難局を乗り切るために、ぜひ以下の連絡先までご連絡いただき、事例を教えていただきたい。

 

連絡先
内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局 ビッグデータチーム
V-RESAS: https://v-resas.go.jp/
E-mial :j.resas.j9j@cas.go.jp

 

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