コロナ後の経済浮揚の鍵はインバウンド 県南部への周遊促進を

各産業分野において厳しい状況が続く奈良県。浮揚の鍵はやはりコロナ後のインバウンドだ。従来、同県は訪日外国人客には「日帰り観光地」とみなされ宿泊者数は低迷していた。奈良市周辺では宿泊施設の建設が進むが、果たしてそれだけで大丈夫なのか。 

神の使いとして保護されてきた奈良公園の鹿。観光のキラーコンテンツでもある

 

「あをによし 奈良の都は 咲く花のにほふがごとく 今盛りなり」と万葉集に詠われた古都・奈良は、日本が世界に誇るインバウンドのキラーコンテンツのひとつである。

とりわけ、奈良公園で、お辞儀をする鹿に鹿煎餅をあげることは訪日外国人観光客の楽しみになっており、その様子は多くの人々によってSNSで世界中に拡散・共有されている。

しかし、一方、地域の創生という観点から見た場合、奈良県には克服していくべき多くの課題もある。そこで、本稿では産業分野ごとに概況を把握しつつ、インバウンドを核に今後の方向性を考えてみたい。

奈良県の各産業の厳しい現状とは

奈良県は大きく分けて北西部の奈良盆地と南部の山間部からなるが、県人口の9割以上が奈良盆地に集中している。近鉄やJRの路線網の充実を背景に、より高い給与水準を求め、あるいは仕事の選択肢の多さから大阪府(や京都府)に通勤する「奈良府民」が多い。県外就業率は2010年調査で全国1位、2015年には全国2位である。

少なからぬ県民の消費行動が大阪など県外で行われることもあって、県内の従業者一人当たり商業年間販売額が47位(2016年)と商業は振るわない。

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