多様なプレーヤーが参入、変革期の医療・ヘルスケア業界を知る

ヘルスケアビジネスもデジタルトランスフォーメーション(DX)を中心とした事業開発やビジネスモデルの構築が求められる。本連載では将来あるべき医療・ヘルスケアの姿から必要とされることが明確な、デジタルヘルス領域を中心にビジネスの新戦略を考察していく。

複雑で"わかりにくい"医療業界

医療・ヘルスケア業界と言われると、何かブラックボックスな感じを受けないでしょうか? おそらく、多くの方が医療とかかわるときというのは、自分や家族が病気になったときであって、健康であればあるほどあまり医療のことなど考えないのではないでしょうか。

医療業界も診察を提供し、それに対してお金を得ているので「ビジネス」といってよいのですが、通常のビジネスと比べて特殊な点が多々あります。

わかりやすいところでは、まず、医療を行える人が決まっているということ。医師をはじめ、国家資格である看護師や薬剤師などの医療従事者が協働して医療を行っています。また医療は病院やクリニックなどの医療機関で提供されるということ。そしてその医療の価格というのは国が決めているということなどです(表)。

表 医療とビジネスの違い

出典:編集部作成

 

自由診療といって医療機関が自由に価格を決めて医療行為を行うこともできますが、日本では国民皆保険制度があるため、多くの医療機関は「保険診療」を行っています。保険診療の場合、生活者は医療費が3割負担(いうなれば70%オフ!)なので、多くの人が通常は保険診療の医療機関を受診しています。保険診療では2年に1度、厚生労働大臣がさまざまな医療行為や、医療で使われる薬・機器一つ一つの価格を決めます。通常のビジネス視点で、売上を価格×顧客数としてとらえると、医療業界では価格が全国一律に固定されてしまっているため、医療機関は顧客数(=患者数)、特に時間あたりの人数を増やすことで売上を上げるモデルをとることになります。これが、短時間で多くの患者さんを診るという「3分診療」などにもつながってきます。

このほか、医療業界は登場人物が多いという点も特徴かもしれません。医療・ヘルスケアのビジネスを考える場合は医療機関と患者(生活者)だけでなく、医療機関で働く医師や医療従事者、製薬企業や医療機器メーカー、薬局、厚生労働省や医薬品医療機器総合機構(PMDA)といった行政、医師会、大学や学会、医療費を負担している保険組合(保険者)、企業、医療費の審査機関(支払基金)など、これでもまだ足りないくらい多くの登場人物がいます。

どこか一つの利益を優先したビジネスを行うと全体のバランスが取れずに立ち行かなくなることもあり、全体最適を図りながら進めることを求められるのが医療・ヘルスケア業界です。

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