日本の可能性開花へ コロナ体験後の地域社会を構想し実装する
危機から立ち直るために、前例のない新しいものを構想し実装する能力が求められている。社会構造が揺らぐ中、生活者・実務家の感覚を保ちながら、境界を超える構想が求められる。脱炭素化宣言、地方創生、農業振興などを統合した、地元主体による再生可能エネルギー実装に期待。
まだ闘いの途上にある今回のコロナ禍で試されたのは、医療と公衆衛生、経済、雇用、教育など、異なる分野の作戦を統合的に企画・推進することであった。敗戦後75年間、タテ割りの中をがむしゃらに走って今日を築いた日本だが、「これまで見たことのないもの」を構想し実装する、総力戦の能力が試される時代がまたやってきた。
「コロナ後」の議論は盛んであるが、地域、生活者、あるいは事業家の立場からは、「天は自ら助くる者を助く」2)というのが実感ではないだろうか。
今回、東日本大震災の後のように、あらためて、疎開・地方回帰の動きが生じている。それを地域の発展につなぐための、地元側の態勢が試される。2020年4月、まち・ひと・しごと創生の第2期が始まったが、インバウンド観光で「海外から稼ぐ」方針は、いま見直しをせざるを得ない。しかし、地域から外に流出しているお金を減らす余地は大きい。表は、やや古いが、人口約2500人弱の村の対外エネルギー支払い(石油や電力などへの支払い)の一例である。再エネを地元の力で活用して「外にお金を流さない」戦略は、地域の生存、SDGsなどにも有効である。これまで、タテ割りの中で不十分であったエネルギーの視点を、新しいまちづくりにつなげていく必要がある。
表 徳島県佐那河内村から外に出たエネルギー支払い
緊急事態宣言の下、あらためて、夕焼けのきれいな日々を過ごした。2019年9月、BBCは気候変動について「この18カ月が人類存続の分かれ道」だとの懸念を報道した。コロナ禍で、世界的な二酸化炭素排出量はわずかに抑制できたが、落ち込みは一時的なものである。これからは、地域からの脱炭素がますます重要になろう。
今や、劇場は地球規模である。あらためて、自国主義の高まり、アメリカの強さのほころび、中国の過剰な監視社会化などが目立っている。しかし、新たな世界秩序の実現には、おそらく30年程度の時間が必要である。当面、地域や企業の自助こそが重要だ。
30年後の未来を構想する
30年先への展望というとき、これまでは、歯の浮くような話が多かった。社会構造が震撼したコロナ禍のいまだからこそ、生活者・実務家の感覚を保ちながら、思考の制約を外し、境界線を超えた構想が求められる。そこでは、次の3点が肝要である。
①多分野の専門家と市民や関係者がともに共同作業する、問題バックキャスト&解決の「場」を実現すること。
②タテ割りを超えた大胆な構想を、積算に基づく定量的な検討で、地についたシナリオとして仕上げること。
③シナリオの実装を、地域外とも連携しつつ、小異を超えた「地域主体」の形成によって展開すること。
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