農業、観光、製造業など潜在力は大 岩手の強烈な個性の発信を
北海道に次ぐ広大な面積の8割を山地が占め、「日本のチベット」と呼ばれた岩手県。厳しくも豊かな自然環境に育まれたものも多く、今も、他にはない独特の魅力を放つ。屈指の人口減と高齢化に苦しむ中、その強烈な個性を今後どう活かしていくかが課題だ。
岩手県は、独自性という点で国内でも屈指の存在である。正義感に溢れ気骨のある県民性から、中央権力と戦い続けてきた長い歴史を有し、特に戊辰戦争時の奥羽越列藩同盟加入が明治以降の県土開発に著しい遅れを招いたとされる。県土の8割を山間部が占め、本州最寒地とされる自然条件の厳しさも相俟って、岩手県が一時期、「日本のチベット」と呼ばれた所以でもある。
しかし、周辺地域から隔絶された存在となったことが逆に功を奏し、柳田國男「遠野物語」に見られるような極めて独創的な民間伝承・説話・文学を育むこととなり、石川啄木、宮沢賢治らの個性豊かな文学作品ともども岩手県のアイデンティティーを形成することとなった。今でも「座敷わらし」が出現するとされる温泉宿が人気を博し、あるいは「カッパ淵」などが観光名所になっているのは、そのためである。
産業面から見た岩手県の特性
そんな同県だけに、産業面から見ても、歴史の長い産業や、他にはない独自性の強い産品に「強み」を有する。
代表例が、近年、中国人富裕層の爆買い対象になった南部鐵器(鐵瓶)だ。100年企業でトップメーカーの「岩鋳」が欧州全域に展開しているほか、近年は各社で才能豊かな若手職人たちが台頭している。老舗の日本酒蔵元「南部美人」も、海外の航空会社で採用されるなどワールドワイドな展開が進んでいる。
そして、温泉もまた県の誇る地域資源である。国内の温泉宿の9割以上が濾過循環方式を採用している中にあって、岩手県の温泉宿には湯治場や秘湯の風情を残した「自家源泉かけ流し」の宿が数多く残されていることは温泉好きにとって大きな喜びである。全国規模で広く知られているのは夏油(げとう)温泉など少数に留まっており、今後はもっと知られてよいだろう。
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