2020年7月号
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地域特集 栃木県

バランスの取れた産業県 人手不足を解決する変革に期待

嶋田 淑之(ジャーナリスト、産業能率大学兼任教員)

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首都圏の食糧供給基地として、そして製造業の生産拠点として長年機能してきた栃木県。しかし今、深刻な人手不足が同県を脅かしている。コロナ禍がもたらす非連続な環境変化を逆手に取り、農林水産業(や6次産業)、製造業の変革を実現できるかが今問われる。

宇都宮市の羽黒山からの景色。広大な平野部での農業・工業が盛んだ

東京から60~160kmに位置し、東北縦貫自動車道・北関東自動車道などの高速道路網や、東北新幹線などにより「東京との時間距離が短い」強みを持つ栃木県。

その地理的優位性に加え、肥沃な農地と豊富な水資源、穏やかな気候などから「首都圏の食糧供給基地」として長年機能し、農業産出額は全国第9位(2018)。出荷量が1968年から連続日本1のいちご(「とちおとめ」等)をはじめ、かんぴょう(国内シェア9割以上)、うど、二条大麦、にら、こんにゃく芋、生乳など生産量が全国第1・2位の産品が並ぶ。

かんぴょうと、その原料ユウガオのシェアは栃木県が全国一

また、製造品出荷額等では全国第12位(2017)に位置し、県内総生産に占める製造業の割合では全国第2位という屈指の「モノづくり県」でもある。「液晶テレビジョン受信機」(全国シェア59.0%)、「歯科用機械器具、同装置」(全国シェア39.7%)、カメラ用交換レンズ(全国シェア36.6%)をはじめ出荷額第1位の製造品は十数種にのぼる(2017)。

まさに「バランスの取れた産業県」であり、県内総生産(実質)増加率(2015)では全国6位、1人当たり県民所得は全国3位(2016)と経済的に恵まれている。

農業や製造業で
顕在化しつつある「危機」

各産業とも一見、盤石に見える栃木県だが、危機的状況が忍び寄りつつある。これまで同県では、生産年齢人口割合の高さ(60.1%、全国第10位、2017)が各産業を下支えしてきたが、少子化傾向が顕著となり、留まるところを知らない若年層の県外流出と相俟って、労働力不足があらゆる産業分野に広がりつつあるからだ。

農業就業人口は1985年以降30年間で約6割減少し、2015年の年齢別割合は65歳以上が約6割を占めるに至っている。農業従事者の減少・高齢化は深刻化する一方である。

それ以上に厳しい状況にあるのが製造業だ。5年前の本コーナーで指摘したように、同県の製造業は東京などに本社を有するグローバル企業の「下請け」として製品を納入する中小企業が過半数を占めている(平成26年度工業基本調査では58.3%)。しかも、下請けの意識として、「自社製品開発等による自立」を指向する企業は10.5%に留まり、「現在の関係の維持」(=下請け維持)を指向する企業が55.3%に達している。

そして、グローバル企業の下請けが主力という構造上、県製造業は、景気や為替など世界経済の影響を受けやすいという不安定性・脆弱性を有しているのである。

若い人々による自立・自律型の経営実現を期待したいところだが、県内中小企業は若年層の大企業志向も相俟って人材確保が困難だという。

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