宇和島発 接木苗で日本一 製造業化で「稼げる農業」を目指す

病害虫に強く、収量の高い接木苗を安定供給することにより農業を"稼げる産業"に変えようと奮闘するベルグアース(宇和島市)。農地が狭い不利な状況を克服しようと生み出された事業モデルで、宇和島から世界市場も視野に入れる。

接木苗の生産作業は人手で行う。宇和島には真珠の核入れ作業に習熟した手先の器用な労働力が豊富で、事業立ち上げの際の主戦力となったという。

トマトやキュウリ、ナスなどの果菜類は、毎年同じ土壌で生産を続けると連作障害を起こす。そこで、病害虫に強い近縁植物の苗(台木)に、生産する作物の苗(穂木)をつないだ接木苗を使うことで障害を防いできた。接木苗から収穫できる野菜は、収量・品質ともに優れることから、かつて農家は自前で接木苗を作っていた。生産者の高齢化、農業の大規模化が進んだ今では、接木苗を外部から購入するケースが増えている。この接木苗を年間3600万本生産し、業界トップを走るのがベルグアースだ。

稼げる農業を目指して
たどり着いたビジネスモデル

社長の山口一彦氏は、宇和島の農家に生まれ、10代後半に農業を継いだ。20代後半のころ、スイカの接木苗の生産を頼まれたことが苗事業に目を向けるきっかけになった。「不安定な農業を続ける中で、自分で値決めができ、安定的な受注生産できる苗事業なら農業で飯が食べられる」と踏んだのだ。以降、愛媛県内だけでなく、施設園芸が盛んな高知県、宮崎県などへと接ぎ木苗の出荷先を広げていった。

山口 一彦 ベルグアース 代表取締役社長

全国展開を目指すべく大手種苗メーカーとの取り引きを模索する中で、あるとき生産現場を訪ねてきた種苗メーカーの担当者からこんなことを言われた。「命がけで作っているのはわかりました。でももしあなたが死んだら同じ品質の苗はできないのでは?」。この言葉が山口氏の胸に刺さった。以後、「製造業としての農業」を目指す取り組みが始まった。

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