女子中学生トップ雑誌『ニコラ』と始める地域の課題解決
全国の女子中学生から圧倒的な支持を得ている雑誌『ニコラ』。企業とのコラボレーション企画では、大きな成果を上げているという。これまでシティプロモーションの文脈では、注目されてこなかった女子中学生。そのポテンシャルとは?
シティプロモーションを考えるとき、どんな地域でも最初の一歩として誰にどんな情報を届けるかを考えるだろう。シティプロモーションサミット2020で、とりわけ若いターゲットを提案したのは、新潮社。同社は、女子中学生向けの月刊誌『ニコラ』と共創することのポテンシャルについてプレゼンした。
1997年に創刊された『ニコラ』は、読者として女子中学生だけにターゲットを絞っている日本唯一の雑誌で、実売部数14万部を誇る。文部科学省のデータでは昨年の女子中学生の人数が約160万人、単純計算で11人に一人がニコラを購読していることになる。2017年には、集英社が発行する『セブンティーン』を抜いてティーンズ誌販売部数で1位となった。
読者の生の声を活かす企画
出版不況、雑誌が売れないといわれている時代に、なぜ安定した売り上げを維持できているのだろうか? 今回のサミットに登壇した同誌編集長の小島知夏氏は、こうコメントした。
「『ニコラ』の読者アンケートは切手を貼って郵送という超アナログですが、毎月3,000〜5,000枚届きます。このアンケートによると、スマホを持っている中学生は6割程度で、親と使用時間や閲覧サイトなどに関するルールを決めて利用している子がほとんどなので、スマホに依存している子は少ないと思います。イオンに入っている未来屋書店でよく売れていて、週末に家族や友達とイオンに行ったときに買う子が多いですね」。
このアンケートで判明した読者の1カ月のお小遣いは、1,200〜1,500円。『ニコラ』の価格は520円だから、3分の1以上を占めていることになる。それだけに「たくさん読めるところがあって満足してもらう作りを意識」しているそうで、ファッション、美容、学校、友達関係など「中学生の女の子の生活全般にまつわる情報満載」(小島氏)だという。
内容についても、現代の中学生との感覚を知るために、毎月80人ほどの読者を呼ぶ〈ミニミニ開放日〉を開催。そこで得た生の声や反応を企画に活かしているという。そのなかでも読者の圧倒的な人気を集めているのが、誌面に登場するモデル、通称〈ニコモ〉。
「創刊以来、芸能事務所に所属していない素人だけを対象とした独自のオーディションを開催していて、応募者は毎回1万人を超えます。女優の新垣結衣さん、川口春奈さん、タレントの藤田ニコルさんはニコモ出身です」。
読者にとってニコモは憧れの存在であり、小島氏によると、ニコモの私服や私物の紹介など、ニコモに関係する企画も人気で、ニコモを目当てに雑誌を買う読者も多い。
現在は東北から九州まで、全国から集まった29名のニコモがおり、今回のサミットには1、2を争う人気だという青森の高校1年生・黒坂莉那さん(16歳)、石川の中学2年生・林 芽亜里さん(14歳)がゲストとして登壇した。
『ニコラ』はリアルイベントも開催しており、夏休みに大阪、春休みに東京で読者1,000名を無料招待する読者開放日を実施。
SNSの発信にも力を入れており、フォロワーはツイッターが5.1万人、インスタは2.4万人、ユーチューブは7.7万人を誇る。特に〈ニコラTV〉としてニコモが登場するユーチューブは反響が大きく、人気の動画は再生回数がおよそ30万回に及ぶという。
これまでにない市場で開拓
小島氏とともに登壇した新潮社の広告部副部長、志村浩宏氏によると、女子中学生の人気ナンバーワン雑誌として『ニコラ』は唯一無二の存在になっており、誌面に広告を出稿するのも日本の大手企業が大部分を占める。
企業とコラボした広告企画も多く、大手筆記具メーカー「パイロットコーポレーション」との企画では、筆記具のボディの柄をニコラとコラボ。この商品が数十万本売れるという。
「眼鏡市場」を展開するメガネトップとの企画では、眼鏡のつるの部分のデザインでコラボして、予定生産数を大幅に超える売り上げを記録しただけでなく、新規顧客の開拓にもつながったと喜ばれたそうだ。ほかにも、ワイモバイル、ユニ・チャームなど大手企業とのタイアップは数多い。
こういった豊富な実績を背景に、志村氏は「『ニコラ』の活動を通じて地域の課題を解決したい。地域企業の活性化、健康福祉、観光、ふるさと納税など、その可能性はあらゆるところにあります」と語る。
「ニコモは全国各地から集まっています。地方の企業や特産品、農産物とのコラボをすれば、日本中の女子中学生に向けたアピールができます。商品化の過程で、数多くの読者とニコモ双方からの意見も聞けるのが強みです。ニコモの出身地であれば、広報大使として地元を盛り上げる役割を担ってもらうことも考えられます。〈ニコラTV〉を使った観光資源、地場産業の紹介など、女子中学生目線で企画された動画の制作も可能です」。
中学生にアピールしても大きな経済効果がないのでは? という疑問を抱く読者もいるだろう。しかし、志村氏は「大人の女性に引けを取らない経済効果を持つ」と話す。
「なぜ中学生に訴求することがメリットになるのかといえば、一番は経済の活性化です。ひとりの女子中学生の周辺に何個お財布があると思いますか?十数年前までは両親とそれぞれの祖父母で6個と言われていました。現在は、それぞれのおじ、おばも含めて10個と言われています。お小遣いは1,500円弱ですが、アンケートの結果でもひとりの女子中学生のまわりで洋服代、習い事など毎月数万円が動いていることがわかっています」。
シティプロモーションでは、20代から30代、40代の働き盛りの世代をターゲットにするところがほとんどだろう。しかし、それでは競合が多く、際立った効果を出すのは簡単ではない。『ニコラ』とのコラボによってこれまでにない市場が拓ける、あるいは予期しない相乗効果が生まれる可能性もある。
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株式会社新潮社 広告部
シティプロモーション担当窓口/志村 浩宏
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