「行政経営」は自治体に何をもたらすか 功罪を読み解く

長年、民間の経営手法を公的部門に応用した「行政経営」の必要性が叫ばれている。しかし、行政経営の定義は曖昧であり、また、行政の世界に民間の視点を当てはめることは、無理を生じさせてしまう恐れもある。行政経営は、改めて捉え直されなければならない。

筆者が自治体職員をしていた2000年頃は「ニュー・パブリック・マネジメント」(New Public Management)という概念がとても流行していた。NPMは、民間の経営手法を公的部門に応用した公的部門の新たなマネジメント手法であり、成果主義、競争原理、顧客主義、現場主義が基調となっていた。それに伴い「行政経営」という言葉も頻繁に使用されるようになった。

今日においても「行政にも経営感覚が必要だ」や「経営を意識した行政活動が大事だ」と言われる。確かに、行政経営という概念は重要な気がする。しかし何をもって行政経営と言うのだろうか。実は曖昧なのではないか。行政経営は何を公的部門にもたらしたのか。それは善の効果であるのか。そのような思いから、今回は「行政経営」を取り上げてみる。

議会質問等における
「行政経営」の動向

図表1は「全国47都道府県議会議事録横断検索」を活用した「行政経営」に関する議会質問等の推移である。議会からの質問と執行機関の答弁が含まれている。

図表1 都道府県議会における「行政経営」の質問等の推移

出典:全国47都道府県議会議事録横断検索

 

図表1を確認すると、2000年前後から右肩上がりで増加してきたことが理解できる。1990年代後半は、日本にNPMが紹介された時期にあたる。NPMが契機となり、行政評価が始まった。

都道府県議会における行政経営に関する初めての質問は、1981年6月の宮城県議会定例会に見られる。都道府県に限定しなければ、1980年代前半から行政経営の質問等が少しずつ登場している。その一つの理由に「株式会社神戸市」と言われた神戸市の存在がある。神戸市は民間に倣い都市経営(行政経営や自治体経営とも言われていた)の手法を確立し、「神戸ポートアイランド博覧会」を開催して成功させるなど全国的に注目を集めていた。

図表2は各都道府県議会における「行政経営」の質問等の回数である。都道府県により差がある。ただし注意すべきことは、図表2は「行政経営課長」等の役職名の発言も含まれているため、参考程度として確認していただきたい。以下では、簡単に行政経営に関する議会質問等を紹介する。

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