LIXILがソーシャルビジネスを黒字化 途上国で簡易式トイレシステム

途上国で課題となっている、トイレの衛生環境の改善に取り組むLIXILが、最初に進出したバングラデシュで初の黒字化を達成した。社会問題の解決を目的としたソーシャルビジネスが、事業として自立できることを証明した。

インドでSATOを手にする女の子

不衛生な水と環境が、子どもの命を奪う

現在世界では、約20億人が安全で衛生的なトイレにアクセスできない生活を送っているといわれる。実に、世界人口の4人に1人がこうした環境で生活している計算。社会の持続可能性にかかわる大きな問題としても認識されており、国連の持続可能な開発目標(SDGs)でもゴール6「安全な水とトイレをみんなに」に掲げられている。

排泄の問題は、すべての人間の尊厳にかかわるが、乳幼児や女性にとっては特に深刻な問題をはらんでいる。水・衛生を専門とする国際NGOウォーターエイドによると、不衛生な水や環境に起因する下痢性疾患で、5歳未満の子どもたちが1日約800人、年間約29万人命を落としているという。

また、20億人のうち約 7 億人が屋外で排泄しなければならない生活を送っている。人目につかない場所まで数十分歩かなければならないこともあり、用を足しに行く途中で、子どもや女性はいやがらせや暴行を受ける危険性もある。また学校に安全で衛生的なトイレがないことで、思春期を迎えた女児が学校に行けず、貧困の連鎖を生み出す一因にもなっているという。

現地に根差したビジネスで
雇用を作り持続可能なサイクルへ

こうした衛生課題に対し、トイレを含む水まわり製品や住宅建材のメーカーであるLIXILが取り組んできたのが、開発途上国に簡易式トイレシステム『SATO(サト)』を普及させる事業だ。SATOの特徴は、安価でメンテナンスしやすい構造であること。水を注いで排泄物を流すとカウンターウェイト式の弁が開き、流れた後に閉まる。悪臭や病原菌を媒介するハエなどの虫を防ぐ仕組みだ。1回の洗浄に必要な水の量は約0.2 ~ 1Lと少量。子どもでも安全に使えるだけでなく、簡単に洗浄できるため、生活用水に事欠くような少雨地域などさまざまな環境やニーズ、生活様式にも適応するよう設計されている(下図)。

図 SATOの仕組み

少量の水で流せ、カウンターウェイト式の弁で悪臭や虫を遮断する

 

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