青森初の上場を目指すベンチャー 地域目線でIoT製品を開発

青森県のベンチャー企業として初の東証マザーズ上場を目指すフォルテ。IoT分野でユニークなプロダクトを次々と開発し、2019年には「東北ニュービジネス大賞」を受賞した。葛西代表は「青森の抱える課題を解決できれば、それは全国の課題解決に結びつく」と語る。

葛西 純(フォルテ 代表取締役)

フォルテの葛西純代表は2007年、当時在籍していたNTTと3機関(日立製作所、大阪大学、東京大学)による研究開発プロジェクトのメンバーとして、実証実験を青森市で行っていた。コンパクトシティ構想を打ち出していた青森市の中心市街地で、モバイル端末に利用者それぞれの趣味嗜好に合った情報提供を行い、誘客や購買につなげるというものだ。しかし、結果的には商店主の高齢化やPC・携帯電話の普及率の低さなどに阻まれ、実用化には至らなかった。

「実は2005年から弘前市の土手町や五所川原市のショッピングセンターでも実証実験を行っていて、手応えは感じていました」

青森市での実証実験は2007年で終了となったが、葛西代表は、プロジェクトを継続するために立ち上げられたNPO法人に参画。そして数年後、「計画をスピーディに実行するには、自分が責任を負い、自分で最終的な決定をしていくしかない」と個人で挑戦することを決意した。

自転車用の観光案内音声ナビ
『ナビチャリ』が出発点

スマホが普及し始めていた2010年頃、アプリが生活を豊かにしていくのを目の当たりにした葛西代表は、『ナビチャリ』の開発に着手した。それは、GPS付き電動自転車に搭載された観光用音声ナビガイドだ。骨伝導ヘッドセットを通して、自転車に乗ったユーザーに付近の観光や飲食店の情報を提供し、目的地へと誘導する。2011年に青森県でサービスを開始した。

GPS搭載の観光用音声ナビガイド『ナビチャリ』。骨伝導ヘッドセットを通して、自転車に乗ったユーザーに付近の観光や飲食店の情報を提供し、誘客につなげる

「声の振動を頭蓋骨に伝えるスピーカーなので、耳を塞がず、クルマなど周囲の音も聞こえるので安全です」

さらに、道案内の音声ガイドが流れる前にハンドルを振動させ、注意を促すようにした。しかし、多くの機能を搭載したため、『ナビチャリ』は約25万円と高額になってしまい、展示会に出展すれば注目はされるものの、なかなか売れなかった。そんな中、来場者から「なぜデバイスを自転車に付けっ放しなのか」と聞かれて、葛西代表はハッとした。

「自転車から外せば、通信端末として売れると気づいたんです。そこから移動体端末、骨伝導ウェアラブル、それぞれ機能をシンプルにしてコストを下げ、収益性を高めた製品開発に移行しました」

その後、『ナビチャリ』は八戸市をはじめ全国10ヵ所ほどのレンタサイクルで導入されている。

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