顧客基盤を取り込む オイシックス・ラ・大地の提携戦略

安心・安全な食生活や健康志向の消費者向けに、高品質な食材の宅配事業を営むオイシックス・ラ・大地。店舗経営のノウハウや顧客基盤など、外部の資源を生かすための様々な提携を進めてきた。日本の食ベンチャーの成長を支えるため、マーケットプレイスの運営を開始したところだ。

松本浩平 オイシックス・ラ・大地 取締役 経営企画本部 本部長

オイシックス・ラ・大地は、自然派食材・ミールキットの宅配事業者だ。安全で高品質な食材の定期宅配ビジネスを手掛けていたオイシックスと大地を守る会が2017年に経営統合し、さらに2018年に同業のらでぃっしゅぼーやと経営統合して現在のかたちになった。同社から有機・特別栽培野菜・ミールキットなどを定期契約で購入している会員数は約30万人、直接契約している生産者数は約4000軒に上る。2019年3月期の売上高は640億円、2020年3月期にはこれを700億円とすることが目標だ。

Oisixでは下ごしらえ済みの食材をセットにしたミールキットの販売に力を入れている

主要先進国に比べて日本のオーガニック食品市場は規模が小さい。3社の合併の背景には、安全で高付加価値な農産物・食品の市場を、スピーディーに拡大する、という狙いがあった。合併後は組織を統合するため、行動規範の統一、さらには「社員同士の交流を深めるため飲み会を増やす、等の施策を打ちました」と、オイシックス・ラ・大地の取締役経営企画本部本部長の松本浩平氏は説明した。

前身の3社とも、顧客層は安全で美味しい食品には相応の対価を支払う人々だ。固定ファンが付いていることもあって、それぞれのブランドは継続させている。合併により、各ブランドと契約して野菜などを納入していた生産者は、他のブランドでも生産物を販売できる可能性が開けた。有機・特別栽培により高付加価値化を目指す農家のチャンスは、3社の経営統合以降、拡大したといえる。

高級食料品店を関連会社に

現在、同社が力を入れるのが、リアル店舗と海外への展開だ。実店舗への展開では、2019年5月に、DEAN &DELUCAの運営企業であるウェルカムを関連会社化した。DEAN&DELUCAは、ニューヨーク発祥の高品質の食材店で、おいしいものを集めた食のセレクトショップだ。国内でのライセンスをウェルカムが保持している。国内では東京・丸の内や吉祥寺、横浜など、各地域の一等地に店舗を構え、若年層の認知度も高い。

両社は2013年に資本業務提携し、商品販売などで連携してきた。オイシックス・ラ・大地の事業の1つに、EC分野のノウハウと物流を生かした他社ECサイトの支援があり、ウェルカムはその支援先の1つだった。

宅配をメイン事業とするオイシックス・ラ・大地と、店舗での販売にノウハウを持つウェルカムはお互いに補完しあえる関係にある。今回、関係を深めて関連会社化することになったのは、「DEAN&DELUCAの通販事業が順調なので、物流などの面でも連携し、さらに収益性が高まる可能性が出てきたため」と、松本氏はいう。

今後は、ウェルカムの物流改革に着手したり、既に実施している共同での商品開発を強化していく考えだ。また、オイシックス・ラ・大地の店舗事業にウェルカムのノウハウを活用することも計画している。

海外展開の強化では、米国における高級食材宅配事業への参入を目指して、2019年4月に米Three Limes社を買収した。Three Limes社は、米国で「Purple Carrot」ブランドのビーガン向けミールキット宅配ビジネスを展開している。米国では、自身の健康のためから動物愛護、地球環境保護まで、様々な理由で動物由来の食品を食べない人が増えている。そんな中で、Purple Carrotの製品は肉・魚・乳製品を使用しない料理のミールキットとして、健康的な食事に関心のある層に人気だという。

「米国進出を検討しており、その足掛かりとなる、しっかりした生産設備を持つ企業と組みたかった。特にビーガン向け市場を狙ったわけではありませんが、日本でも今後ビーガン向けのミールキットを発売する計画はあります」と松本氏は語った。

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