スタートアップが取り戻す日本のダイナミズム!5か年計画ラストスパートへ

(※本記事は経済産業省が運営するウェブメディア「METI Journal オンライン」に2026年1月15日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

2022年をスタートアップ創出元年と位置づけ、「スタートアップ育成5か年計画」が始動してから3年が経過した。この間、国内のスタートアップは順調に増え続け、日本経済における存在感も確実に高まった。更に高市政権下で創設された日本成長戦略会議では、分野横断的課題への対応としてスタートアップ政策推進分科会が設置されるなど、スタートアップ育成・支援は、もはや政府の経済政策の重要な柱となっている。

今月の政策特集は「日本のスタートアップは次のフェーズへ」。スタートアップが、どんどん既存の大企業とコラボし、追いつき、超えていく。そんな経済のダイナミズムを、再び日本に取り戻すことはできるのか。5か年計画のラストスパートに入った今、あらためてスタートアップ政策の現在地、その可能性を見つめてみた。

日本のスタートアップは次のフェーズへ

万博会場でGlobal Startup EXPO。世界のリーダーが集結

大阪・関西万博も終盤にさしかかった9月17、18の両日、万博会場内にある「EXPOメッセ(WASSE)」に、日本をはじめ世界中からスタートアップやベンチャーキャピタル(VC)のリーダーたちが顔をそろえた。

「Global Startup EXPO 2025」――。ディープテック※領域を中心に、スタートアップの技術やサービスを世界に向けて発信することや国内外の起業家、投資家の交流促進などを目的に、経済産業省が近畿経済産業局、日本貿易振興機構(JETRO)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と共同で開催した。

2日間で合計37のセッションが実施され、欧米の名だたるVCの最高経営責任者(CEO)らが相次いで登壇。日本市場への期待、投資への強い意欲を表明した。会場には、国内外のスタートアップ145社がブースを出展。来場者は約9560人に上り、1194件の商談が成立したという。

初日、あいさつに立った石破首相(当時)は、「人口が減っていく中、にぎわい、幸せをスタートアップの皆さんがもたらしてくれることを、心から期待したい」などと述べ、産業構造の変革や地方創生に向けたスタートアップの役割に期待感を表明した。

※ディープテック…社会課題の解決や新たな産業創出に貢献する、科学的な発見に基づいた革新的な技術のこと。

9月17、18の両日、大阪・関西万博会場で開催された「Global Startup EXPO 2025」。世界中からスタートアップやVCのリーダーたちが顔をそろえた
9月17、18の両日、大阪・関西万博会場で開催された「Global Startup EXPO 2025」。世界中からスタートアップやVCのリーダーたちが顔をそろえた

10万社創出、投資額10兆円目指す。「スタートアップ5か年計画」

そもそもスタートアップとは、どのような企業を指すのか。

一般的には、(1)新しい企業であって、(2)新しい技術やビジネスモデルを有し、(3)急成長を目指す企業──と定義されている。その上で、経済成長の牽引役や雇用創出の担い手としての役割とともに、社会課題を解決する主体となることが期待されている。

政府は2022年11月、当時の岸田首相の「スタートアップ創出元年」宣言を受けて、「スタートアップ育成5か年計画」をスタートさせた。「人材・ネットワークの構築」「資金供給の強化と出口戦略の多様化」「オープンイノベーションの推進」を柱に、2027年度にスタートアップへの投資額を10兆円に増やし、将来的にはユニコーン※100社、スタートアップ10万社を創出する目標を掲げた。

※ユニコーン…評価額が10億ドル(約1550億円)を超え、設立10年未満の非上場企業を指す。

「スタートアップ育成5か年計画」の概念図
「スタートアップ育成5か年計画」の概念図

21年比で1.5倍の約25,000社に。マクロ経済、転職市場でも存在感

計画始動から3年が経過した現在、スタートアップとそれを取り巻く状況は確実に前進している。

その数は2021年当時の16,100社から1.5倍の約25,000社まで増えた。特に大学発のスタートアップは、2021年の3,305社から2024年には5,074社にまで増加。特に2024年は過去最高の伸びを記録。増加分の5割以上を、東京都以外で創業した企業が占めた。

こうした状況の下、スタートアップはマクロ経済にも一定のインパクトを与えている。スタートアップによる2024年度の国内総生産(GDP)創出額は、直接効果で12.19兆円。間接波及効果まで含めると22.33兆円に達し、2023年度比で15%の成長率を示した。

3.61兆円の所得を生み出し、58万人の雇用も創出した。大手企業からスタートアップへの転職は右肩上がりで推移しており、特に40歳以上の転職者が高い伸びを示している。

スタートアップによる経済効果

ユニコーン企業の数、出口戦略の多様化に課題も

一方で、ユニコーンと称される企業の数は、2021年の6社から8社に増えたものの、690社と群を抜く米国は別にしても、英国(55社)、フランス(28社)、シンガポール(15社)、韓国(13社)の後塵(こうじん)を拝している。資金調達状況を見ても、日本は2024年現在、対国内総生産(GDP)比0.14%と、米国、シンガポール、英国、フランス、韓国より低い割合となっている。

スタートアップが関係したM&A取引額も諸外国と比べて小さいものとなっている。日本はスタートアップの経営者やVCが上場を志向する環境であり、出口戦略として株式市場に上場し、株を一般に公開する「新規公開株式(IPO)」をとるスタートアップが多いため、M&Aの伸び悩みは、出口戦略の多様化という点で課題の一つとなっている。

「スタートアップの数などエコシステムの裾野は拡大しており、『芽』は着実に成長しているが、『規模の成長』は今後更に力をいれるべき」というのが、経済産業省の現状に対する評価だ。

着々と「裾野」は拡大。今後は「高さ」の創出目指す

スタートアップ支援は、どのような方向に向かっていくのか。

スタートアップの数やその創出GDPの増加など、これまで着実にその「裾野」は拡大してきた。今後は、引き続き裾野を広げていくと同時に、どれだけユニコーンと呼ばれる企業価値の高いスタートアップを生み、育てていけるか、「『高さ』の創出」が焦点となる。

そのために、政府は「成長資金、M&A促進」「グローバル・エコシステムのハブの一つへ」「ディープテックの成長」「地域エコシステムの形成」――の4つの方向性を掲げ、重点的に取り組んでいく方針だ。

今後のスタートアップ政策

成長資金を確保すると同時にスタートアップと大企業双方にメリットのあるM&Aを出口戦略として促進していく。日本のスタートアップエコシステムを、世界有数の規模へ引き上げていくため、海外からの資金・人の呼び込み、海外展開を目指す起業家と現地の投資家・協業先のネットワークを強化する。さらには、商用化までに膨大な時間と資金を要し、リスクも高いディープテックについて、成長段階に応じて支援。大学の強み、産業の集積具合などの地域ごとの特徴を生かしたエコシステムの構築を目指す――。

大阪・関西万博で開催された「Global Startup EXPO 2025」は、5か年計画のラストスパートに向け、まさに「号砲」を鳴らすイベントとなった。

「スタートアップは、革新的な技術やビジネスモデルを通じて新しい市場を創出し、経済において重要な役割を果たしています。『スタートアップ育成5か年計画』の後半戦にあたり、裾野の拡大から高さの創出を図り、官民が一体となって支援を強化し、世界に誇れるエコシステムの構築を目指します。」

経済産業省イノベーション創出新事業推進課長の石川浩さんは、スタートアップ政策の今後について、こう強調した。

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