退院後の高齢者を介護施設につなぐ 神戸発の新サービスを全国へ
高齢者が医療機関を退院し、介護施設に入所する際に必要となる情報をデータベース化。適切な介護施設とのマッチングを実現するサービスが、神戸で始まっている。同サービスを提供するスタートアップが目指すのは、誰もが暮らしたい場所で暮らせる社会だ。

川原 大樹(KURASERU 代表取締役CEO)
属人ベースの情報を
DB化により共有ナレッジに
日本が超高齢社会を迎える中で、厚生労働省は高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしができる「地域包括ケアシスム」の構築に力を注いでいるが、医療と介護の連携は簡単ではない。
「大きなネックが2つあると考えています。第1に、医療と介護業界の間には情報格差があること。第2に、急増する高齢者に対応するための人的リソースには限界があることです」
そう語るのは、KURASERU(神戸市)の川原大樹CEOだ。同社は、医療ソーシャルワーカー・ケアマネジャーのための介護施設マッチングサービス『KURASERU』を提供しており、それは前述の2つの課題を一気に解決する。『KURASERU』は、高齢者が医療機関を退院して介護施設に入所する際に必要となる情報をデータベース化しており、医療・介護をシームレスにつなぐサービスだ。

医療・介護をシームレスにつなぐサービス『KURASERU』
「医療機関から退院した高齢者は、体力回復のために長期間の療養が必要になることが珍しくなく、また、特別なケアや食事への配慮が必要になる方もたくさんいます。それにも関わらず、ソーシャルワーカーが記憶頼みで受け入れ先を探し、何度も電話やファックスをやりとりして交渉するやり方が続けられてきました。離退職が激しい業界でもあるので、必要な人に必要な情報を届けるためのナレッジが蓄積されていなかったのです」
『KURASERU』を利用すると、ソーシャルワーカーが施設探しに費やす時間は最大10分の1になるという。『KURASERU』の利用者は、対象となる高齢者の要介護度や生活保護受給の可否、入居希望施設のエリア、希望する価格帯などを入力して施設を検索し、条件に合う施設に空室があれば利用者の属性(性別、年齢、既往歴や身体状態など)を入力してオファーを出す。
入力必須項目の大半はチェックボックスやドロップダウンで選択できるようになっているため、高齢者やITが苦手な職員にも親しみやすいインターフェイスになっている。
「医療産業都市」を目指す
神戸市の方向性とも合致
川原CEOは自身も介護職に従事した経験を持ち、介護会社の役員も務めた。そうしたキャリアで培った知見や人とのつながりがKURASERUの土台になっている。そして2017年10月、大学時代からIT業界で活躍していた友人・平山流石(るい)氏(取締役COO&CTO)と共にKURASERUを立ち上げた。
「ソーシャルインパクトがあれば、収益はついてくると考えました」
創業してすぐの2017年12月、「神戸グローバルスタートアップゲートウェイ」に採択され、神戸市内で実証実験の機会を得ることができた。
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