インバウンド推進へ地元企業が連携 一般住民の意識も変える

2018年、ついに訪日外国人数は3000万人を超えたが、国内の体制が十分に整っているとは言えない。課題を解決しようと2018年の4月に設立されたのが、「インバウンド推進協議会OITA」。異なる文化を持つ多様な人々を受け入れるため、事業者と住民が協力して解決策を考えている。

推進協議会の定例会の様子。講師は専門分野を持つ会員が務める

組織として「集まる」
利点を課題解決に活かす

「協議会設立における目的は3つ。1つ目は、情報伝達の問題を解決することです」と話すのは、インバウンド推進協議会OITAの二宮謙児会長だ。国を挙げて進めている観光立国政策において、インバウンドに関する補助金給付やセミナー開催などが積極的に行われており、そういった情報はまず、各県の観光協会に伝達。そこから各市町村の観光協会や観光課などに送られ、さらに観光協会の会員などに流される。

二宮 謙児インバウンド推進協議会OITA 会長。湯布院町の湯平温泉で旅館、山城屋を経営している

「しかし、市町村の観光協会や観光課の担当者の判断で必要ないとされた情報が、末端まで流れていないというケースが見受けられました。そんな補助金やセミナーがあるなら受けたかった、という声をよく聞いたんです。必要な情報が、必要な人に行き渡っていないのは大きな損失であり、組織を作れば、会員の隅々まで情報を行き渡らせることができると考えました」。

2つ目が、インバウンド対応に関する課題の解決だ。個人的に解決できるものもあれば、公共交通機関などのインフラのように、一施設が声をあげてもそうそう解決できないものもある。「それを組織として要望し、解決できるようにしようと考えました。また、様々な課題に対し会員みんなでディスカッションをすることで、個人では厳しい課題の解決に対し知恵も集まりますし、自分一人では気づかなかったアイデアも生まれます」。

そんなつながりによるコラボレーションの促進が3つ目の目的だ。大分県民であれば誰でも参加できるという協議会の会員は現在、企業5社を含めた117会員。大分県内のいろいろな業種と地域の人々が集まっており、それぞれが得意分野やアイデアを持ち寄ることでイノベーションが生まれることを期待していると二宮会長は言う。

抽出した課題と解決策を
積極的に県に発信

会員には、宿泊施設などの支配人をはじめ、社会人、学生、主婦もいる。「私の持論は、インバウンドは観光だけでなく、すべての業種、そして一般住民にもかかわるべきというもの。この協議会の取り組みを、観光業者だけのものにはしたくなかったんです」。多岐に渡る業種や立場の会員が2カ月に一度集まって行うグループディスカッションでは、第一部でできる限り会員の中から得意分野がある人に発表してもらい、第二部でテーマごとに分かれて討議、最後には解決策もまとめるという。

「ディスカッション前に、課題をアンケート方式で集めたところ、228件の意見が出ました。それを大きく5つに分けると、最も多い課題として言葉の問題があることが分かりました。2番目が、交通や通信、決済法などのインフラで、3番目がニーズと情報発信。そして4番目が、地域資源の活用です。日本人の視点だけでは分からない地域資源を活用できていないのでは、という意見がありました。5番目が、大分県全体を周遊してもらうための地域連携。そういうことについて、毎回テーマを変えてグループ討議を行っています」。

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