シームレスな広域観光でインバウンド拡大 人口流出減に繋ぐ構想を
全国各地でインバウンド拡大の障害になっている2次交通の貧弱さ。それに対し、和歌山県はシームレスな広域観光の実現によって日本に不慣れな欧米豪人の招致に成果を挙げている。これを「人口流出の減少」にどう繋げるか、同県の事業構想力が今問われる。
本誌2014年5月号「和歌山県特集」において、筆者は県内各地を取材して歩き、仁坂知事インタビューを含め5本の記事を執筆・掲載させていただいた。あれから5年。
5年前の知事インタビューを読み返すと、「和歌山県には『油断しやすい』という特色があり、環境変化に乗り遅れがちであるが、同時に『逆境に強い』面もあって、今まさにこの特色を生かすべき頑張り時を迎えている」という趣旨のことを書いている。
果たせるかな、同県はこの5年間に逆境における強さを発揮し、いくつかの面で大きく変貌することに成功した。なかでも顕著なのが「インバウンド拡大」だ。
シームレス化で
欧米豪インバウンド増
日本の大多数の道府県における"創生の障害"のひとつに「2次交通問題」がある。人口減少・過疎化などの進行で公共交通機関が衰退し、最寄りのターミナル駅(新幹線の駅など)や空港からの足が非常に貧弱な状態に陥っている地域が少なくない。
そのため、訪日外国人観光客が急増する中にあって、こうした不便な地域にまで足を運ぶのは繁体字圏(台湾・香港)を中心とした訪日ハードリピーターだけだと言われてきた。
ところが、和歌山県では、世界遺産の高野山から熊野古道という、著しく交通の不便な山奥の広域エリアに、日本に不慣れな欧米豪人観光客を多数招致することに成功したのである。その数は増加し続け、同県インバウンドの約3割を占めるまでに成長している。
それを可能にした要因は次の3つだ。
① 広域交通の整備~和歌山県が、県単独ではなく大阪府の関西国際空港と連携して、欧米豪を中心とした訪日客を主たるターゲット層と定め、関西国際空港と高野山をダイレクトに結ぶリムジンバスを運行。
② 域内交通の整備~高野山と熊野古道をダイレクトに結び巡る「『高野山・熊野』聖地巡礼バス」を県内のバス会社2社で運行。
③ 乗降・乗換の利便性向上~①のリムジンバスから②の聖地巡礼バスへの接続をスムーズにし、かつ、聖地巡礼を終えた後の次の交通機関への接続をも容易にすべく、JRと路線バス4社で統一方針の下、多言語で乗降・乗換の案内情報を提供。
すなわち、上記①②③が整合性をもって有機的に連携し機能することで、関空からのシームレスな広域観光を可能にしたことが欧米豪インバウンド拡大の要因なのである。
2018年12月18日、米国の世界最大手民泊仲介サイトAirbnbが発表した「2019年に訪れるべき19の観光地」に、日本から唯一、和歌山県が選出されたのも頷けよう。
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