ICTで中小企業が成長 県の支援で数々の研究開発、事業化が実現

埼玉県産業技術総合センター(略称SAITEC、SAitama Industrial TEchnology Center)は、技術支援、研究開発支援、事業化支援の3本柱の基本支援に、時代に合わせた4つの重点支援施策で、県内の中小企業を応援する。

中村 雅範(埼玉県 産業技術総合センター長)

地域の中小企業を支援する
公設試験研究機関

埼玉県の産業を支えるのは中小企業であり、その従業員だといえる。業種は製造業の比率が高い。SAITECの支援目的は地域産業における「困りごと」の解決、また「やりたいこと」の実現だ。主な目的は技術的な側面から産業の活性化を図り、県民の豊かな生活に貢献することだ。

SAITECは、本所(川口市) 北部研究所(熊谷市)の二拠点で、依頼試験や機器開放などの技術支援、受託研究や共同研究などの研究開発支援、製品化を支援する事業化支援の3本柱を基本に活動している。

全ての支援の入口は技術相談だ(無料)。例えば『新製品の開発にあたり、何から始めればよいのかわからない』、『原材料がいつもと違う』、『より精密な測定を行いたい』、『技術関連のセミナーに参加したい』といった相談に応じる。電話や来所による個別相談に対応し、SAITECの技術職員が、解決までの道筋を一緒に考える。

技術支援メニューの1つの依頼試験では、材料の化学分析や製品寸法の精密測定などの試験を職員が行い、その結果を試験成績書として発行する。故障箇所の拡大観察から、原因の分析、測定まで一連の試験を行うことができる。また、機器開放では、お客様がSAITECの保有する各種機器を利用することができる。例えば、3Dプリンタで迅速に試作品を作製するなどだ。職員による操作指導も受けることができる。これらのメニューは有料で提供している。

研究開発支援では、県内製造業の活性化を図ることを目的として産業界での実用化や製品開発を目指した産業支援研究を行う。

また、個別企業の技術的課題に対応するための受託研究。新たな技術シーズの創出や分析技術の開発、蓄積を行う新技術創出研究。さらには、国の補助金などの競争的資金に採択されたテーマで共同研究を行っている。

具体的な成果事例として、『医療用穿刺針の高品質化』がある。外科手術時に使用する医療用穿刺針は、低コストで、かつ製品表面の高品質化が必要であり、SAITECが保有する技術シーズの電解研磨を用いて、低コストで表面品質に優れた医療用穿刺針を実現した。また『ソフトスチーム技術の開発』では、食材を特性に応じた最適温度の「湿り飽和空気」で加熱することにより、素材のもつ食感、味、香りなどを自在に引き出す技術及び装置を開発した。

事業化支援の代表は『次世代型ものづくり製品開発支援事業』だ。本事業は、補助金を取得して一定の成果をあげたものの、製品化まであと一歩という中小企業を支援する。例えば、① 製品開発プロデューサーを配置し、商品化計画から製品開発、販路開拓までをハンズオン支援②課題ごとに適切な専門アドバイザーを派遣③ SAITECによる依頼試験、機器開放の無料実施 (50万円まで)の支援を行う。

同事業で支援した製品は、数々の賞に輝いている。例えば、最高水準の高効率モータで省エネ運転の実現を評価された『ブラシレスモータローラー(新井製作所、さいたま市)』は2018年『超』モノづくり部品大賞「機械・ロボット部品賞」と第8回埼玉県渋沢栄一ビジネス大賞「テクノロジー部門」の大賞を受賞した。また、『BDハンディストーン(サンタイプ、さいたま市)』は、石の質感や色柄をそのままに「抗菌・消臭」機能付与を可能にし、さいたま市ニュービジネス大賞2016「ものづくりスター賞」を受賞した。

他にも、一瞬で全身の寸法を正確に採寸できる『学生服オーダーメイド生産システム(光和衣料、久喜市)』が2017グッドデザイン賞に輝き、不織布の形状記憶加工技術を用いた『 柔らかいファブリック置き時計 k'clock(中島プレス工業、越谷市)』は、第5回埼玉県渋沢栄一ビジネス大賞「テクノロジー部門」特別賞を受賞している。

IoT検証ラボ(模擬工場)。PCLによる生産システム

本所(川口市)SAITECオープンラボ

全文をご覧いただくには有料プランへのご登録が必要です。

  • 記事本文残り38%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。