誰でも「自分の農家」を持てる 生産者と消費者をつなげる仕組み

「求ム。秘密のカブ主。」の見出しで、クラウドファンディングに成功。オーナー(蕪主)になると野菜リストが送付され、そこから欲しい野菜を選ぶと、農家がそれを育てて送ってくれる。誰でも「自分の農家を持てる」仕組みが始まっている。

佐々木 康裕(FARM OWNER'S 代表)

山形市内で農業を営む佐々木康裕氏(36)は、約0.01%しか市場に出回らない昔ながらの「固定種・在来種」と呼ばれる有機野菜を、支援者の注文に応じて生産するサービス『FARM OWNER'S』で注目を集めている。生産者と消費者がお互いに楽しめる関係を築きながら、「楽しく稼げる農業」を目指す農家の新たな挑戦だ。

消費者が食べたい野菜を育てる

「何をしたら生産者も消費者もお互いに楽しいのかな? と、ただそれだけで始めました」

FARM OWNER'Sの着想についてそう笑って話す佐々木氏は、4代続く農家に生まれながら、卒業後は地元の建設会社に入社して9年間勤務、その後、地元食材にこだわったフレンチレストランのオーナーに出会ったことで伝統野菜の魅力に取り憑かれ、農業の道を志したという異色の経歴の持ち主だ。

「蕪主、オーナー」とも呼ばれるFARM OWNER'Sのクラウドファンディング支援者は、約30種の品目の中から、支援金額に応じて好みの野菜をいくつか選び、その希少な固定種・在来種の野菜を無農薬・無化学肥料で農家に育ててもらい、送ってもらえる。言い換えれば、「お好みの珍しい有機野菜を、農家があなたに代わって生産します」ということになる。

固定種・在来種とは、その土地にもともとあった昔ながらの伝統的な野菜のこと。「これぞ野菜! という味がするんです。ピーマンはピーマンらしい苦味で、トマトはトマトらしい酸味。野菜本来の美味しさなんです」と熱く語る佐々木氏。しかし、オーガニックや自然農で育ったそれらの伝統野菜は、市場にはほとんど出回らず、生産者も非常に少ないという。

「形やサイズも不揃いで虫食いなどの傷もあるし、なかなか市場に出荷できない。当然収入にはつながらないし、そんな農業のなり手も少ない。安全で美味しい野菜を食べたいという消費者がいても、なかなか届けられないという現状なんです」

そこで佐々木氏が思いついたのが、野菜を出荷して買ってもらうのではなく、「消費者が食べたいと思う野菜を農家が育てる」という逆転の仕組みだった。

ユニークなネーミングを打ち出して支援者を集め、クラウドファンディングに成功した

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