2019年5月号

新規事業開発のための広報視点

「システム思考」で理解する、企業のコミュニケーション活動

川山 竜二(社会情報大学院大学 学監)

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企業のコミュニケーション活動は、社会をいかに認識し、自社の事業活動との関係性を明らかにすることから始まる。これは、非常に抽象的で難解と思われるかもしれないが、その際に「システム思考」が役に立つ。

システムの渦

システム思考そのものは以前からあった。そのシステム思考は、ビジネス書などで再び注目を集めている。「システム思考」であったり「システム論」であったり、「システム理論」といったようにそれぞれの論者によって考え方に濃淡がある。ここは学説研究の場ではないので、そういうものかと思ってもらえれば良い。

ところで、今度は「システム」とは何かということが意識にのぼる。社会システムと言ったり、それぞれの制度 ―例えば、教育― をシステムと言ってみたり、「システムトラブル」と言ったり多様な使われ方をする。便利な言葉である一方で実体のない、捉えどころのない言葉のように見えなくもない。では、そもそも「システム」とは一体何であり、「システム思考」を取り入れることでどんな利得があるのだろうか。

氷山の一角を見ているだけでは、全体を見ることにはならない。見えている氷山の下には、遥かに大きな体積を占める氷があるのであり、本質を見極めるには、全容を掴む必要がある。システム思考の例えとして用いられる比喩。

システムとは何だろうか

システムとは何か。それだけでも難しい。よく言われるのは、「部分の総和以上のもの」という定義だ。それぞれの部分あるいは部品の寄せ集めではない。部分を集めて組み立てることにより、相乗効果がある集まりのことと考えて良いだろう。要素を集めることで、相互のつながりが生まれて効果を発揮する、そのような集まりである。家族だったら、本人とパートナーがいる。ただいるだけではなく、関係性をつくり愛情や幸福感を生み出す(それ以外にも家族には機能や役割がもちろんあるが)。企業や組織も同様に、さまざまな部門があり、お互いに関係し合ってまとまり、利益を追求する組織体である。一言で言えば、意味のあるまとまりである。

そう考えると、家族を分解した途端に関係性という要素がなくなるので、家族の「部分」を見るとは言えなくなってしまうし、企業を分解して「広報部」だけ見ても企業の「部分」を見ていることにならない。全体のなかでどのような役割をしているのかをそのまま見ないといけない。そう考えるとシステムとして考える意味が見えてくる。

システム思考を考える

システム思考を下敷きに敷いている書籍のほとんどは、このように書いてある。「全体像を捉え、本質を見出す」、「システム思考で未来を創造する」とか「いま起きていることの本質をつかむ考え方」など書いてある。ということは、「全体像」を捉えたり「本質」を見極めたりするのに、システム思考は使えるらしい。先の話では、システムとは「意味のあるまとまり」なのだから合致する。ビジネスの世界でも、いろいろなつながりを考える機会がなかったのではないか。いわゆる「木を見て森を見ず」状態になっていたのではないか。

さて、ここで言いたいのは「森を見る」つまり「全体」を見ることは難しいということである。例えば、企業を見ることを挙げよう。企業を見たからといって、その企業を捉えていることになるのか。企業の活動は企業の外で、ステークホルダーやそれらを取り巻いている社会との関係性でも成り立っている。それらも本来は考慮しなければならないのではないだろうか。それらも含めて、企業の活動を理解することができるのである。つまり、システム思考に飛び込むということは、どこからどこまでかわからないつなぎ目のないネットワークに飛び込んでいくものなのだ。しかし、どこまでも辿っていくと収拾がつかなくなる。まさに「システムの渦」に飲み込まれてしまう。では、どうすればシステムの渦に飲み込まれずに済むのだろうか。

システム思考の一歩前

当たり前だがシステム思考を極めようとしたら、それこそ大学院での学び直しが必要になるだろう。私はそれだけの価値があると思っている。そんなことを言っては身も蓋もないので、私が思うところを最後に述べておこう。

システム思考で重要なことは、自分が何を見ているのか/何を見ようとしているかに自覚的になることだ。自分がどういう意味において全体像を見ようとしているのか。どのような方法で、どのような意図で、何を見ようとしているのか、自覚的になることで大きく変わってくると思う。それはつなぎ目のない世界に自分なりに線を引くことになるからだ。そこには線を引くことの自覚が求められる。自分が何を観察してきたのかを観察する自己観察(自己反省)が重要であるということを伝えておきたい。

 

 

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