2019年5月号

地域特集 香川県

香川県知事が語る 力強い成長へ、アート県の新戦略

浜田 恵造(香川県知事)

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「今年4月に「瀬戸内国際芸術祭2019」が開幕する香川県。アートや文化、自然、食などの地域資源を活かして観光の活性化を図るとともに、AI、IoT等を活用した産業振興も進む。地域の強みを生かした県の成長戦略について、浜田恵造知事に話を聞いた。

浜田 恵造(香川県知事)

AIを活用する人材を育成

――AI、IoT等など台頭する新技術への対応と、それを産業創出につなげるための施策について、お聞かせください。

浜田 香川県は、国が成長戦略を策定するよりも早く、2013年に「香川県産業成長戦略」をスタートさせました。そして昨年、同戦略を見直しましたが、その背景にあったのは人口減少への危機感です。若年層の定住やUJIターンの促進のためには、雇用の創出や成長産業の育成を図らなければなりません。

新たな「香川県産業成長戦略」では、第4次産業革命の技術革新であるAI、IoT等を活用して、様々な社会課題を解決できる持続可能な経済社会システム「Society5.0(超スマート社会)」の考え方も取り入れ、各種施策を積極的に展開しています。

AI技術の活用については、我が国のAI研究の第一人者で本県の産業活性化アドバイザーでもある、本県出身の松尾豊・東京大学特任准教授から引き続き御助言をいただくほか、県内企業等を対象にAIの実践的な知識・技術を基礎から応用まで体系的に学ぶことのできる講座を開講するなど、生産性向上等にAIを活用する人材の育成を推進しています。

また、県産業技術センターにおいて、AIをはじめとする技術研修会等の開催による人材育成や普及啓発に取り組むほか、国立研究開発法人 産業技術総合研究所と連携した研究開発や、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やIoT、ロボット技術等の導入を支援していきます。

「香川県産業成長戦略」における戦略の体系

出典:香川県・資料

 

――県内企業のイノベーション促進やベンチャー創出に向けた施策について、お聞かせください。

浜田 県内企業のイノベーションを促 進するため、AI、IoT、ロボット、CNF(セルロースナノファイバー)等高機能素材、3D積層造形技術等の成長が見込まれる分野について、製品化・事業化に結びつけられるよう、産業技術総合研究所や大学などとも連携し、引き続き、県内企業の技術開発や技術力の向上を積極的に支援していきます。

また、産学官の連携による科学技術に関する研究施設として、香川県科学技術研究センター(FROM香川)を設置しており、現在、香川大学などと連携し、マイクロ・ナノデバイスの研究開発や複合糖質の研究開発を行う共同研究グループに研究室を無料で提供しています。

ベンチャー支援については、創業・起業の相談対応などの総合的なサポートなどに加え、新技術等の研究開発を行う創業間もない企業などを支援するため、香川県新規産業創出支援センター(ネクスト香川)にインキュベート工房を設け、妊婦と胎児の健康管理システムを用いた妊婦と医師とのコミュニケーション・ツールの構築に取り組む企業などに利用いただいています。

瀬戸内国際芸術祭の
経済効果を高める施策

――今年4月26日に開幕する「瀬戸内国際芸術祭2019」について、誘客増や経済効果を高めるための施策について、お聞かせください。

浜田 瀬戸内国際芸術祭は、アートを道しるべに瀬戸内海の島々を巡りながら、心癒される風景と、そこで育まれた島の文化や暮らしに出会う現代アートの祭典です。

これまで3回の開催を重ねる中で、その独特の手法が国内外から多くのファンを獲得し、世界の注目を集めています。例えば、最近では、米国の「ニューヨーク・タイムズ」や英国の「ナショナル・ジオグラフィック・トラベラー(UK版)」で、2019年に訪れるべき旅行先として日本で唯一、瀬戸内が取り上げられ、瀬戸内国際芸術祭がその目的の一つとして紹介されました。

4回目となる瀬戸内国際芸術祭2019でも、世界トップレベルのアーティストが瀬戸内の持つ美しい景観、文化、歴史を感じながらそれを表現するアートや建築を展開し、世界中から訪れた人々と、そこに暮らす人々との新たな出会いが地域の元気につながっていくことを期待しています。

そのためには芸術祭の魅力を国内はもとより世界に向けて発信し、より多くの皆様に実際に島々を訪れていただくことが重要であり、経済効果も高まると考えています。そこで誘客の新しいプランとしては、より深く芸術祭の魅力や瀬戸内の「食」を楽しんでいただく予約制のガイド付きツアーを、オフィシャルツアーとして実施します。

また、作品鑑賞に必要な作品鑑賞パスポートについても、すべての会期で有効な「3シーズンパスポート」と、春・夏・秋それぞれの会期のみ有効な「会期限定パスポート」を用意しています。特に3シーズンパスポートは、すでに販売を開始していますが、開幕前日まで1000円お得な前売り特別価格で販売しており、インターネットでのオンライン決済も可能なのでぜひお買い求めいただきたいと思います。

「選ばれる香川」に向けて、
インバウンド推進にも力を注ぐ

――インバウンド対策や滞在型観光の推進、夜の観光コンテンツ開発など、交流人口拡大に向けた取り組みについて、お聞かせください。

浜田 国内外からの観光客から旅行先として「選ばれる香川」となり、交流人口の拡大を推進するため、瀬戸内海やアート、自然、食など本県ならではの魅力ある観光資源を活用し、様々な取り組みを進めていきます。

県の認知度やブランド力を向上させるため、「うどん県」としてプロモーションを行っていますが、正式なキャッチコピーは「うどん県。それだけじゃない香川県」です。本県には様々な魅力があり、それらを紹介する動画やポスターなどのプロモーションコンテンツの制作や、株式会社ポケモンのキャラクターであるヤドンの活用をはじめとする企業とのタイアップ、ターゲット層に応じた各種媒体の活用などにより、効果的な情報発信を行っていきます。

また、SNS等については、写真映えするスポットとして、水面が鏡のように反射する父母ヶ浜や、実写版映画『魔女の宅急便』のロケ地となった小豆島オリーブ公園の風車などが、とても評判になっています。

水面が鏡のように反射する父母ヶ浜や、実写版映画『魔女の宅急便』のロケ地となった小豆島オリーブ公園の風車など、撮影スポットとしてSNSでも人気を集めている

さらに、観光客の周遊・連泊を促進するため、市町や民間事業者等と連携し、着地型旅行商品の造成などに取り組む「香川せとうちアート観光圏」事業を実施するほか、新たに民間事業者や市町等が実施する夜型イベントへの支援を行うなど、夜型観光の推進にも取り組んでいきます。

一方、海外からの誘客活動については、高松空港の定期路線就航先である韓国、中国、台湾、香港を中心に、現地旅行会社等と連携のうえ、市場ごとの動向やニーズ等に応じて、海外の旅行会社を対象とした招請ツアー行程に夜型の観光コンテンツや広域周遊観光ルートを積極的に組み込むなど、戦略的なプロモーションや誘客活動を実施します。

特に、近年、本県への来訪者が増加している欧米豪市場については、本年9月のラグビーワールドカップや来年7月から8月の東京オリンピック・パラリンピックの開催を控え、また、ニューヨーク・タイムズ等で旅行先として「瀬戸内の島々」が高い評価を受けたこと(米国で最も著名で、国際的な影響力が大きいニューヨーク・タイムズでは日本で唯一、第7番目)を踏まえ、動画広告によるPRや富裕層をターゲットとした集中的なプロモーション活動など、誘客活動に取り組んでいきます。

また、観光施設等における多言語表記や情報発信、観光案内所での外国人対応のほか、外国人観光客の多様なニーズに対応できる地域通訳案内士の育成に加え、災害時の非常時においても、外国人観光客が安心して本県を旅行できるよう、交通事業者や宿泊事業者、観光施設などと連携して災害時の情報提供の充実に努めることなどにより、快適に香川の旅行を満喫できる受入環境の向上に取り組みます。

移住者数の増加を実現

――香川へのUJIターンを促進する施策について、お聞かせください。

浜田 人口の社会増を実現する人口減少対策は県政の最優先課題であると認識し、「新・せとうち田園都市創造計画」と「かがわ創生総合戦略」に沿って、戦略的に対策を講じています。

移住促進サイト「かがわ暮ぐ らし」や移住専門誌に加え、新たに県外在住者向けPR漫画を作成し、香川県で暮らす魅力等について積極的に情報発信するとともに、東京や大阪などの大都市圏での移住フェア・セミナーの開催、東京・大阪の県事務所等に配置した移住コーディネーターによるきめ細かな移住相談等を行うほか、市町と連携し、「空き家バンク」を活用した空き家改修補助や、移住者に対する賃貸住宅借上げ家賃等の助成を行うなど、総合的な移住・定住施策に取り組んでいます。

こうした取組みにより、県外から本県への移住者数については、2014年度には753人だったのが、2017年度には1375人となり、増加傾向が続いています。全国の自治体も人口減少対策として様々な移住施策を展開しており、移住者の増加を目的とする地域間競争は、これまで以上に増している状況であり、香川県の魅力をより一層積極的にPRしていくことが重要です。

香川県には全国に誇れる様々な魅力があります。都会的な利便性と自然が調和し、コンパクトにまとまっていることや子育て環境も優れていること、瀬戸内海に面してアートや文化が豊かで、うどんをはじめ新鮮な野菜や果物、瀬戸内海の地魚、最近では香川特産の「オリーブブランド」など、香川県の様々な魅力を体感してもらい、移住先として香川県を選択していただきたいと考えています。

信頼・安心、成長、笑顔の香川へ

――香川県が目指す将来像や中長期のビジョンについて、お聞かせください。

浜田  県では「新・せとうち田園都市創造計画」を策定し、「信頼・安心の香川」、「成長する香川」、「笑顔で暮らせる香川」の3つの基本方針のもと、様々な施策に取り組んでいます。

「信頼・安心の香川」としては、災害への備えはもちろん、日々の安心を感じ取ることができるとともに、すべての人が安心と生きがいをもって住み続けることができ、健やかな日々を謳歌できるふるさと香川をつくっていきます。

一人ひとりの命を守る防災・減災対策を強力に進めるほか、「子育て県かがわ」の一層の充実や、交通死亡事故抑止対策、医療・介護の充実確保などを推進していきます。

「成長する香川」としては、足腰の強い地域経済を確立し、県内産業を振興して雇用の確保拡大を進め、世界を魅了する香川ブランドを創造し、活力ある香川をつくっていきます。

成長は人口減少問題の克服、地域活力の向上のためにも重要であり、若者が本県に定着し、戻ってくる地域を目指さなければなりません。このため、AIなどの先端技術も活用した県内産業の振興や、観光客から選ばれる香川づくりなどを推進していきます。

「笑顔で暮らせる香川」としては、あらゆる命を尊重し、人々が笑顔で集える思いやりの香川、瀬戸内海の自然環境を守り、世界がうらやむ魅力的な香川、子どもたちの夢と笑顔を大切に、未来を育てる香川をつくっていきます。

人口減少時代の到来など、時代は大きな変革期にあり、課題は山積していますが、新しい時代に対応した様々な施策や取組みをさらに発展させて、「せとうち田園都市の新たな創造」を目指し、全力で取り組んでまいります。

 

浜田 恵造(はまだ・けいぞう)
香川県知事
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