2019年3月号

ランナーズ・ヴィレッジ レポート

900万人がターゲット ランニング×農家民泊で「走れる旅行先」創出

月刊事業構想 編集部

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長野県飯田市では、「走れる旅行先」をコンセプトに、自然を感じながらのランニングと、農家民泊を掛け合わせて、新たな客層を呼び込む構想「ランナーズ・ヴィレッジ」を進めている。ランナーに特化した観光プランから見えてくる、農山漁村の強みとは。

日本の棚田百選「よこね田んぼ」を満喫するコース

長野県の南部に位置する飯田市は、りんご並木の街として有名な農業従事者の多いまちだ。その市でランナーズ・ヴィレッジに取り組む千代・龍江地区は、20年前から地域ぐるみで農家民泊に取り組んでおり、中高生の教育旅行先として都心や中部地方を中心に人気を集めている。一方で、一般旅行客の誘客や、農家民泊の受け入れ家庭が高齢化する中で受け入れ家庭の数を維持することなどが現在の課題だ。

ランニング前後にりんごやいちご狩り

そんな中、2018年1月、農家民泊に取り組む株式会社南信州観光公社および千代・龍江地区は、農林水産省の農山漁村振興交付金を活用し、「ランナーズ・ヴィレッジ」を提唱する事業構想大学院大学をパートナーに、同プロジェクトを立ち上げた。

食・体験・宿にランニングをプラス

ランナーズ・ヴィレッジとは、地域の食や体験、宿泊など既存の観光資源を集約し、更に風光明媚な景色のランニングコースをセットにして、ランナーを誘客する着地型観光だ。ターゲットは、国内で900万人といわれるランナー。社会人の余暇の充実、健康志向、人とのつながりを楽しむランナー専用のSNS 「runtrip」などの普及によって、今後もランニング愛好家が増えることが予想される。

実際に進めていくためには、地域の声を拾い、関係する人を増やすことが必要だ。プロジェクトが始まった直後に千代・龍江では地区の住民に対して意見交換会を実施。事業構想大学院大学の教授やスポーツ観光の有識者によって、今後のプロジェクト内容の周知と意見交換を行い、合意形成を進めていった。

地域の魅力に気づき、磨きあげる

同じプロジェクトでも、地域によって差別化は可能だ。飯田市でいえば、龍江地区にはフラットで走りやすい河川敷の道がある一方、千代地区では急こう配の登り下りの道や棚田があるなど、変化にとんだコース設計ができるため、中級者以上のランナーに訴求可能だ。

実際にモニターツアーで千代・龍江地区を走った24時間マラソン日本記録保持者の重見高好氏(現在は売木村職員)は、「龍江地区のコースは景色がいいだけでなく、準高地トレーニングとしての潜在価値を持っている」と語る。準高地トレーニングの地域は、静岡県裾野市や高崎市の榛名湖などが先行事例としてブランディングを図っているが、飯田市にも今後可能性がある。市民ランナーのみならず実業団やプロ選手を誘致できれば、地域経済はさらに活性化するだろう。

農山漁村にしかない観光資源

モニターとして農家民泊やこんにゃくづくりやランニングをセットにした一泊二日の旅を体験した市外在住のランナー、長野安那氏はこう語る。「実はランニング以上に、地元の人との交流が最も楽しい思い出です。走っている最中に通りがかったお家で干し柿をいただいたり、ランニング前と後に受け入れ家庭のおじさんに『いってらっしゃい』や『おかえり』の声をかけてもらったり。当たり前のようにランナーに接してくれることがとても嬉しく、こんな地域があるんだ、という気持ちとともに、『おかえり体験』を求めにまたすぐにここに来たいと思っています」。これは先述のように、地域と何度も意見交換を実施し、住民総出の受け入れ体制を構築した成果である。

農家でのこんにゃく作り体験

コース途中での地域との交流

地域ごとの構想を支援

事業構想大学院大学ではランナーズ・ヴィレッジの構想計画を作るための12個の専用カリキュラムを用意し、専門知識を有する実務家教員とゲスト講師が地域毎の構想計画の策定をサポートする。

飯田市はすでに農家民泊の下地がある状況でのスタートだったが、地域によっては、一から農家民泊や住宅宿泊事業法(民泊新法)の申請支援をすることも可能だ。既存の旅館・ホテルに加えて、利用者にとっての宿泊の選択肢を広げることで、これまで来なかった客層を誘客することができる。

構想計画から実行フェーズへ

飯田市では、1年をかけて5種類の変化に富んだランニングコースを作成、実際にランナーを農家民泊にテストで受け入れ感触を確かめ、ランニング専用SNSへのコースのアップロードや旅行体験記事のランナーへの発信など、マーケティング&プロモーションを行ってきた。現在は事業実施主体である南信州観光公社でランナー特化型宿泊プランを打ち出しており、暖かくなる春に本番のツアーを開始する予定だ。

ランナーズ・ヴィレッジ・プロジェクトは現在全国7地域で実践しており、今後も特色ある観光地域づくりをサポートする。

 

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