長崎県大村市×花王ワークショップ 2拠点居住で理想の暮らし実現

長崎県大村市は、空港・高速道路・鉄道を擁し、交通網が発達。航空機を使って大都市圏へ、また九州の各エリアへのアクセスも良い。自然環境や住環境は、大都市圏にはない豊かさがある。

働き方や暮らし方が多様化するいま、自分らしい生き方を求める人たちの間で自然豊かな地方への移住に関心が高まっている。だが、移住に興味はあっても、見知らぬ土地にいきなり移住するにはかなり勇気が必要であろう。そうした人たちを対象に、事業構想大学院大学のシティプロモーション研究会に参加する長崎県大村市と花王 生活者研究センターは、「わたしの暮らしをみつめ直すワークショップ」を二子玉川の蔦屋家電で開催した。蔦屋家電は、新たな生活文化発信のスポットとして、感度の高い人が訪れる。今回、大村市からの提案は「二拠点居住」という、いきなり移住するのではなく、都心と大村に拠点を構えて、都心で仕事をしつつ地方の生活も楽しむという新しいライフスタイルだ。

ワークショップの様子。これまでの暮らしを振り返り、自身の価値観を確認していく

アクセスの良さが可能にする
都会と大村の二拠点居住

最初に参加者はグループをつくり、花王の生活研究センターが慶応義塾大学と共同で開発したパターン・ランゲージ「日々の世界のつくり方」を使って自分の暮らしを振り返り、自分はどのようなことで喜んだり悲しんだりするのか、「心のつぼ」(=大切にしたい価値観)を明らかにしていった。その後、同じく共同開発した、家族の多様なあり方や暮らし方を言語化した「家族を育むスタイル・ランゲージ」を使い、どのような暮らしが理想の暮らしであるのか、グループ内で話し合いながらそれぞれが数年先の未来の自分の姿を想像した。

参加者に理想の生活のイメージができた後は、大村市企画政策部地方創生課長の山中さと子氏が登壇して、「おおむら暮らし」の魅力を説明した。

大村市は、湖のように穏やかな大村湾と、多良山系との間の平野に広がるコンパクトな町である。海と山の自然が豊富にありながら、生活に必要な都市機能を併せ持つ暮らしやすい環境下にある。

山中氏は、二拠点居住を考えるうえで最もお勧めできるポイントとして、「アクセスが抜群に良いこと」を挙げた。大村市には長崎空港がある。そこから羽田空港は1時間半程度、伊丹空港はわずか1時間程度で到着する。市内には長崎自動車道のインターチェンジが2か所あるし、JR九州も走っている。長崎市や佐世保市の都市部は通勤圏内である。空港やインターチェンジには市内どこからでも車で15分ほどで行けるので、福岡・東京・大阪へのアクセスも抜群によいのである。これが、東京や大阪で仕事をしながら「おおむら暮らし」を楽しむという、二拠点居住を可能にしている。2022年には九州新幹線西九州ルートの新大村駅(仮)が開業予定で、大村市のアクセスの良さはさらに向上する。

豊かで美しい大村の自然が
クリエイティブな発想を生む

山中氏による大村市のPRの後は、実際に大村市、福岡市、東京の三拠点居住を楽しんでいるヌースフィアデザイン 代表取締役 布施真人氏と山中氏によるトークセッションを行った。

震災をきっかけに西に住みたいと考えて「おおむら暮らし」をはじめたと言う布施氏は、地元の新鮮でおいしい食材が豊富なことや、物価が安いこと、広い一戸建てが安く借りられることなど、大村市の"住みやすさ"について語り、「大村湾に夕日が映える風景はすばらしい。一番のお気に入りは月明りの海です。邪魔な灯りがないので、月光がそのまま海に反射してとても美しい光景が広がります。これは都会では見られないレアな風景です。居住地のすぐそばに広がる豊かな自然はクリエイティブな発想を与えてくれます」と話した。一方で、「移住当初は方言が理解できず、知人もいないので、どこに何があるのか、どこに行けばいろいろ教えてもらえるのかわからなかった」と、苦労もあったという。だが、最初こそ苦労もしたが、市内には移住者が集まる喫茶店などのポイントが数カ所存在しており、布施氏もそこで移住者同士のネットワークが自然とできた。今は生活に不便を感じることなく、「おおむら暮らし」を満喫しているという。

大村ぐらしについてのトークセッション。大都市にはない魅力を解説。
右)大村市 企画政策部 地方創生課長山中さと子氏、左)ヌースフィアデザイン 代表取締役 布施真人氏

創業塾や新規就農支援など
大村市が理想の暮らしの実現を応援

セッション終了後は参加者から質問を受けた。移住者がなじみやすい地域なのか、住環境は整っているのか、地元で就業できるのかなど、移住をイメージした具体的な質問が多く出た。

移住者が馴染みやすいかどうかについて、山中氏は、大村市には自衛隊とその家族が人口の中で高い比率を占めていて、自衛隊員は転勤が多いため、地域住民は人の出入りに慣れており、移住者に対しても特に抵抗感なく受け入れると説明した。

住環境について、布施氏は、「賃貸マンションや賃貸一戸建てもありますが、大村は地価が安いので、20代や30代でも一軒家を持ち、夫婦で1台ずつ車を持つライフスタイルが一般的です。東京ではほぼありえないことなので驚きました」と話した。

就業に関しては、大村市では移住者が起業するケースが多いという。大村市も、創業塾や起業希望者を対象にした集中講座を実施するなど、起業家支援施策に力を入れている。また、支援も行っており、市の助成を受けながらゼロから農業に取り組むこともできる。山中氏は、起業をしない場合も、市内をはじめ、大村から30分圏内の長崎市や佐世保市にも一般企業が多数あるので、職種の選択肢は多いと説明した。

大村市は今年、移住を検討している人に無料で貸与する住宅を整備した。山中氏は「ぜひ、お試し住宅を活用して『おおむら暮らし』が自分に合うかどうか、大村湾の夕日を見てから考えていただければと思います」と話した。

最後に布施氏が、「いろいろな場所で暮らすという選択肢は今後増えていくと思いますが、大村市はそれに非常に向いていると思います。大村に来てみればそれがわかるはずです」と参加者に呼び掛けて、ワークショップは終了した。

シティープロモーション研究会は、事業構想大学院大学が主催し2018年度に実施。生駒市や花王 生活者研究センターのほか、青森県むつ市、長崎県大村市、ドコモ、モリサワが参画。研究会は、事例研究や議論だけでなく、実証実験を含む実践的な内容。その成果を発表・共有し、意見交換を行うとともに、新たなシティプロモーションのステージへの第一歩とするためのシンポジウムを2/12に開催する。(詳細・申込:https://www.mpd.ac.jp/event/20190212/