宿泊者数V字回復の温泉地 熱海を「働きたくなる観光地」に

明治以来、首都圏近接の温泉地として発展してきた熱海。宿泊者数の減少には歯止めがかかったが、高齢化と人口減が課題だ。きめ細かい相談による産業振興や、市が主導した観光地の整備で、サステイナブルな温泉地を目指す。

齊藤 栄(熱海市長)

熱海は、東京駅から新幹線で40分ほどで行ける、首都圏の人にとっては身近な温泉地だ。80年前に熱海市が誕生してから、主要産業は一貫して観光だった。2018年9月に就任4期目を迎えた、熱海市長の齊藤栄氏に話を聞いた。

個々の事業者を支援する

今、温泉地に遊びに来る人が期待するのは、温泉に加え、雰囲気が良くて料理がおいしい飲食店や、素敵なものが買えるお店だ。つまり、地元の店の1つ1つが魅力的であることが求められる。

そこで熱海市では、2012年に「熱海市チャレンジ応援センター A-biz(エービズ)」を立ち上げ、商店や起業家の支援を開始した。A-bizは、事業者からの相談を受け、魅力的な店舗づくりや売れる商品作りなどのアドバイスを行う組織だ。2017年には活動をリニューアル、チーフアドバイザーを公募し、商品開発や販促で20年以上の経験を持つ山﨑浩平氏を採用した。

「熱海の、個々のお店の魅力を高めたいと考えていましたが、個別支援は行政として手を出しにくいテーマで悩んでいました。すると、経済産業省から出向していた副市長に富士市産業支援センターf-Bizの活動を紹介され、これをモデルにA-bizを立ち上げました」と齊藤氏は振り返る。

山崎氏が就任するまでの5年間は、市職員が事業者に対応していた。A-bizができるまで、市内の中小事業者は、マーケティングに関する相談を持ち掛ける先が身近になかった。一緒に考えてくれる人ができたことは、特に市内の若手事業者にとっては意識改革のきっかけになったという。また、市職員にとっても、地元で商売をしている人の課題解決に真剣に取り組む機会は得難いものだった。

A-bizの活動の中からは、熱海商工会議所が認定する地域ブランド「APLUS(エープラス)」となる商品が生まれるなどの成果が出てきた。A-PLUSは特別審査委員にソムリエの田崎真也氏を招へいし、認定取得が難しい地域ブランドとして知られている。持ち込まれる相談のレベルも次第に上がってきたことから、実績のあるチーフアドバイザーが外部から招聘された。現在、山崎氏のもとに持ち込まれる案件は、起業前の相談から具体的な商品の改良まで、多岐にわたっているという。

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