桜島の噴火リスク 鹿児島市は「防災と観光の両立」を目指す

錦江湾に浮かび、圧倒的な存在感を示す鹿児島の象徴「桜島」。鹿児島市という60万人都市にありながら、今も活発に活動を続ける火山は多くの人を惹きつけるとともに、「防災」という観点と表裏一体の関係にある。特異な立地から世界に貢献する「鹿児島市火山防災トップシティ構想」がはじまった。

井口 正人(京都大学 防災研究所火山活動研究センター センター長)

防災トップシティ構想の提言

日本列島は「災害大国」といわれるほど、常に地震や津波、台風、豪雨など、自然の脅威にさらされている。鹿児島市は、日常的に噴火を繰り返している桜島の間近での暮らしが培ってきた防災体制をもとに、世界に先駆けた、「鹿児島市火山防災トップシティ構想(以下トップシティ構想)」策定に向けて動き出した。2018年4月に9人の専門家による検討委員会を設置。桜島の島内視察や防災関係機関との意見交換のほか、大量の軽石火山灰を想定した車両走行・道路啓開作業検証実験の視察等を行った。そして5回にわたる会議を重ね、10月に提言書をとりまとめ、鹿児島市長に提出した。

委員長を務めた京都大学防災研究所火山活動研究センター長の井口正人氏は「トップシティ構想の目的は2つあります。1つは総合的な桜島火山防災力の底上げで、もう1つは桜島火山の魅力発信による関係人口の拡大です」と話す。

世界的に見ても、都市のそばで活動を続ける火山はほとんどない。噴火や降灰を日常的に経験している鹿児島市は、ロードスイーパーや散水車、克灰袋等の降灰除去体制、防災訓練を通じて高めてきた避難体制、火山活動の観測体制、砂防施設整備に加え、防災関係機関同士の連携体制といったハード・ソフト両面で水準が高い。

「この構想は、鹿児島市が、これから未来に向けて桜島火山と共生していくための取組を、市民と地域、事業者、研究機関・行政が一体となって向上させながら、先進的な火山防災モデル『鹿児島モデル』として打ち出していこうというものです」。国内外の火山地域の被害軽減のために、火山災害対策に係る視察受入、ノウハウの積極的提供・支援を通じて、世界貢献を行う火山防災のトップシティを目指している。

活動中の火山のそばに大都市があるのは世界的に見ても珍しい。火山活動研究センターは、桜島を恒常的に観測・研究するために1960年に桜島火山観測所として発足

「安心して観光できるかごしま」
防災と観光の両立

日本のインバウンド観光客の数が右肩上がりで増える中、鹿児島県のリーディングシティである鹿児島市においては、火山の生命力を間近に体感できる桜島観光の需要は高い。だからこそ活火山にかかわる観光のあり方が模索されている。

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