2019年1月号
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地域特集 鹿児島県

リゾート地で最先端がん治療 バブル跡地を活用、人を呼び込む

永田 良一(メディポリス医学研究財団 理事長)

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指宿市の見晴らしの良い丘の上に、先端医療機関とホテルを開設。これまでに、国内外のがん患者2800人超を治療してきた。保険診療や先進医療制度下での治療に加え、研究も実施している。

市街地からは少し離れた場所に作られたリゾート。晴天時は錦江湾越しに大隅半島が一望できる

薩摩半島の先端、指宿市にある池田湖と海に挟まれた丘の上に、メディポリス指宿がある。多額の累積赤字を抱えて閉鎖された年金保養施設「グリーンピア指宿」の跡地を利用して設置された、リゾート型の複合施設だ。ここに、がんを治療する医療機関であるメディポリス国際陽子線治療センターが開設されたのは2011年のこと。

なぜこの場所に、先端的な治療を行う施設ができたのか。施設を運営するメディポリス医学研究所理事長で、新日本科学代表取締役の永田良一氏に、センター開設の背景や理念を聞いた。

バブル・リゾートの跡地を再利用

「メディポリスの計画は、まず場所ありき。グリーンピア指宿の跡地を何とかしなければならない、というところから始まりました」と永田氏は振り返る。

永田 良一(財団法人メディポリス医学研究財団理事長)

グリーンピア指宿は、1985年に、公的年金の積立金を利用して開業した大規模な保養施設だった。230億円を投じて、450人が宿泊できる大浴場付きのホテルやテニスコート、ゴルフ練習場に観覧車などが整備された。しかし、バブル崩壊の影響で宿泊者が減少し、赤字が蓄積したことなどを理由に、2002年5月に営業を停止。民間企業の引受先を探したが、同年の第1回の入札は「該当者なし」となった。

100万坪の広大な敷地を放置すれば、治安の悪化などの周囲への悪影響が予想される。当時の指宿市長など地元の要望もあって、永田氏が決断し、新日本科学が2004年の第2回の入札で落札した。落札価格は6億円だった。

この時点で、閉鎖から2年以上放置されていたグリーンピア指宿は、伸び放題の草木の上を猛禽類が飛び交う、荒れ果てた有様だったという。使い道は、早急に考えなければならなかった。永田氏が社長を務める新日本科学は、製薬企業の新薬開発のための前臨床試験受託を主力事業としている。そこで当初は、医学関連の研究施設とすることを計画していた。指宿市は鹿児島市からは車で1時間ほど、新日本科学が力を入れている基礎研究から臨床現場への「橋渡し研究」(トランスレーショナル・リサーチ)を、鹿児島大学医学部と連携して進めるには悪い場所ではない。

しかし、研究者しか出入りしない研究施設では、周辺地域を巻き込む経済効果は少ない。そこで、患者が集まり、雇用も生む最先端の医療施設である、陽子線がん治療センターの企画が持ち上がった。

がんの陽子線治療は、放射線治療の一種で、手術をすることなく体内のがん細胞を狙って殺すことができる。がん細胞に対する殺傷効果は通常の放射線治療より強く、正常組織に与えるダメージは小さく、副作用が少ない治療法として知られている。この治療を実施するには、陽子線を作るための加速器と照射機(ガントリー)、加速段階で発生する放射線を遮蔽するための堅牢な壁で囲まれた設備が必要となる。

当然、初期投資も莫大な額となり、メディポリス国際陽子線治療センターの開設に必要とされた資金は、100億円を超えた。2004年にマザーズ上場を果たした新日本科学の事業とすることは、既に困難だった。最終的には、永田氏の個人保証によるシンジケート・ローンで鹿児島銀行をメインとして調達した資金に、国からの補助金を加えて、センターを作った。「当時は40代半ば、最も元気で仕事にまい進できる時期だったこともあって、引き受けてしまいました」と永田氏は笑顔で話した。

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