水中ドローンで世界初の深海1000m達成 筑波大発ベンチャー

筑波大発ベンチャーのFullDepthは水中ドローンを扱う日本発の専業メーカー。水中調査ロボット開発の夢を実現し、海をくまなく探査するべく事業転換した。水中インフラ整備の点検やテレビ撮影などに向け、低コストで使いやすいサービスを提供していく。

伊藤 昌平(FullDepth 代表取締役)

きっかけは三脚魚
夢を諦めきれずに事業転換

日本初の水中ドローン専業メーカーとして産声を挙げたFull Depth。筑波大学発のベンチャー企業として創業したが、その前身の社名は「空間知能化研究所」だった。

「空間知能化研究所は2014年6月に創業しました。この会社は、私が大学在学中につくば市内のベンチャー企業でロボット開発の仕事をしていた経験をもとに設立しました。当時の事業内容は研究機関におけるロボット開発や、センサーデバイスの開発などです。事業自体は滞りなく進んでいましたが、昔から抱えている『水中調査ロボットを作りたい』という思いを捨てきれなくて......。悶々とした日々を送っていたのを良く覚えています」

と、FullDepth代表取締役の伊藤昌平氏は話す。小さい頃から海への関心が人一倍強かったという。さらに、その気持ちを再認識する出来事が大学在学中にもあったそうだ。

「それは、とあるテレビ番組を観ていた時のことです。偶然、子供の頃に図鑑で見かけた深海魚『ナガヅエエソ(三脚魚)』がテレビ画面に映りました。それがきっかけで、『ロボット開発技術を駆使して、この生物を自分の目で見てみたい』という思いが強くなりました」

大学在学中も、起業後も自分の思いが変わらなかったことをから、伊藤氏は2015年4月に空間知能化研究所の本格的な事業転換を考えるようになる。しかし、そこには「水中ドローンを開発するためのコスト」という大きな問題があった。

「水中ドローンの開発にはかなりのお金がかかります。それでもこの事業を絶対実現させたいと思っていたので、資金をいかに調達するかを真剣に考えました。そこで思いついたのが、ベンチャーキャピタルで資金を集める方法です。これを実行したことで、最終的に2億2000万円もの資金を集めることに成功しました」

2018年の3月30日、伊藤氏は社名をFullDepthと改めて、水中ドローンの開発とサービス提供事業を本格的にスタートさせた。

コストと安全面に配慮して
サービスの提供を行う

FullDepthが扱っている水中ドローンのユーザー層は、企業や行政などが中心だ。使用用途は、ダムや港湾などにある水中インフラの設備の点検や、深海でのテレビ撮影業務などが多いという。

「深海調査は大掛かりな設備やたくさんの人手が必要です。そのため、1日あたり500万円以上のコストがかかってしまうこともあります。ですが、当社が開発した水中ドローンを駆使した水中調査では、そこまでコストがかかりません。経済的なハードルが低くなるのは、これを使うメリットですね」

同社が水中ドローンを貸し出す際の利用価格は1日16万円(税抜、保険料含む)。業務の内容によってはわずか2人の人員で対応が可能で、人件費の大幅な削減にもなるという。

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