Honda、走行データを活用して観光客の回遊を分析

自動車ユーザーに提供しているサービスから、観光地のレジャー施設やレストラン、道の駅の回遊状況を把握。売上などの他データと突き合わせれば、改善策を考える助けとなる。

福森譲 本田技研 ビジネス開発統括部 ビジネス開発戦略部戦略課主任

Hondaは、自社の自動車のユーザーに対し、通信型ナビ「internavi(インターナビ)」を提供している。カーナビ本体と通信機器(USIM)を使って、渋滞・災害などの情報を通信費無料で届けるものだ。インターナビ情報センターを介して、気象や駐車場の情報なども車内で取得することができる。会員数は2018年4月の時点で368万人、2012年の時点で計25億km以上の走行情報の蓄積がある。

2011年3月の東日本大震災直後、インターナビを使っている自動車の走行情報は、通行可能な道路を把握する上で役立った。2016年の熊本地震でも同様に、被災者の避難や被災地の救援に向かう人々に通行可能なルートを示す指針となった。そこでHondaでは、インターナビを通じて収集したデータのより広い活用を目指して、「Honda Drive Data Service」の提供を2017年12月に開始した。

同サービスで提供可能な、インターナビユーザーから取得できるデータを、国土交通省の全国道路・街路交通情勢調査と比較したところ、交通量の変化では道路交通センサスと遜色のない結果が得られた。逆に、道路交通センサスでは得られない、数時間の通行止めが与える影響などのわずかな変化も捉えられていた。

観光客の移動を把握

「災害支援から始まっていますが、応用は広いと期待しています」と同社ビジネス開発統括部 ビジネス開発戦略部戦略課主任の福森譲氏は言う。Honda Drive Data Serviceでは、1施設、1カ月の各日ごと、時間別の来店台数や、滞在時間、来場ルートを可視化できる。自動車で観光地を回る観光客の細かい動きを把握できるため、例えば「はしご」されやすい近隣の観光施設はどれかなども調べられる。

福森氏はまず、千葉県南房総市で実施した回遊性調査について紹介した。南房総市は、館山市と鋸南町の間にあり、南千倉海水浴場や、道の駅とみうら枇杷倶楽部などの観光地がある。ところが、ランチタイムには近隣の市に移動してしまう人が少なくないことが明らかになった。市内の飲食店に立ち寄ってもらうための情報発信を強化する必要があることが、データにより示されたことになる。

また、2018年3月にリニューアルオープンした岐阜かがみがはら航空宇宙博物館の来場者分析の例も発表した。データ分析の結果、岐阜県からの訪問者が少ないことが分かった。「名古屋市からの誘客に力を入れていたこともあり、狙い通りとも言えますが、岐阜県にPRすることでより多くの来訪が期待できるのでは」と福森氏は言う。

岐阜かがみがはら航空宇宙博物館の来場者分析例

Honda Drive Data Serviceのデータは、施設が持つ他のデータ、例えば時間別の売上などと重ね合わせると、改善施策の立案に役立つ。「来店と売り上げが連動していなかったり、時間帯ごとに売上の弱点があったり、という傾向が分かれば、仮説構築につながり、改善策を打つことができます」と福森氏は説明した。

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