保育施設業界の新進企業2社 業界の今後の方向性は
女性の就業率向上と共働き世帯の増加、待機児童数の減少など、保育をめぐる社会環境は大きく様変わりし、国でも保育・子育て政策を積極的に打ち出す。そうしたなか、保育施設運営企業は何を考えるのか。大手2社の動向を見る。
少子高齢化・人口減少が深刻化するなか、女性の就業率向上とともに共働き世帯が増加、保育施設数が増えて待機児童問題も解消されつつある。一方、「こどもまんなか社会」を掲げる国は、2023年に「こども家庭庁」を設置、同年の「こども未來戦略」、2024年の「こどもまんなか実行計画」では広範にわたる子育て支援政策の方向性や具体案を示した。保育施設運営企業を取り巻く事業環境は大きく変わってきたといえる。いずれも2000年代の創業となる大手2社、グロ—バルキッズCOMPANYとさくらさくプラスはいかなる戦略を立てるのか。
グローバルキッズCOMPANYは、2006年、東京・足立区に開設した「六町駅前保育園」を母体とし、今日、首都圏を中心に保育施設157件、学童クラブ・児童館11件を運営する。同社は「2030年に、職員、親子、地域の3者(トリプル)から最も信頼(トラスト)される存在になる」という「2030トリプルトラスト」のビジョンを掲げ、2024年11月には、その実現に向けた経営戦略を打ち出した。
戦略では、保育事業の最優先課題を「安心安全の担保」に置き、「安全マイスター」制度導入や見守りインフラ拡充を目指す。既に2024年、子会社おはようキッズの運営全施設・全社員が「こどもあんぜんマイスター」認定を受けた。また、保育の質向上に向けては、個々の可能性を最大限に引き出す「イエナプラン」導入により、保育理念である「豊かに生きる力を育てる」の実現を目指し、その過程でデジタル基盤整備による業務効率・品質向上を進める。さらに、競争力強化から収益源多様化へ舵を切り、「おむつサブスク」や、スノーピークと連携した「キッズキャンプ」などの新規事業も着々開拓中だ。
片や、さくらさくプラスの歩みは、2009年、大阪・豊中市に「りょくちさくらほいくえん」を開設したことに始まり、現在、首都圏や大阪に認可保育所等を89件展開する。同社によれば、共働き世帯、子育て家族は「日本の伸びしろ」であり、事業を通じて子を産みやすく育てやすい社会を実現することこそが同社の目指すところだ。2024年には新スローガンを「日本の伸びしろを、花ひらかせる」とし、多角的な事業展開によって社会的使命を果たそうとしている。
特に、子育て支援住宅の建設・運営、子育て支援カフェの運営など、不動産関連事業をベースにした保育事業は同社の大きな強みであり、都心部でのドミナント戦略を強化しながらその強みを活かしていくことが中長期的な方針だ。一方で同社は、女性特有の身体的・社会的な困りごとをテクノロジーで解決するフェムケア・フェムテック分野も今後の新事業の重要フィールドと考え、2024年には同分野の企業2社を子会社化。子育て支援アプリの展開、子供の日々の行動を見える化して保護者と共有するICTツールの導入などICT戦略も積極的に進めている。
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