厳しい時代に、心和むおいしさを届ける二つの名門メーカー
大阪・関西万博で沸く関西エリア。そこには、長い歴史を誇る二つの菓子メーカーがある。1つは江崎グリコ、もう1社はモロゾフである。いずれも、その数々の名菓のお世話になっていない人はいないと言えるほどの国民的メーカーだ。江崎グリコは2022年に創立100周年となり、モロゾフは2031年に100周年を迎える。少子高齢化・人口減少が深刻化し、事業環境が混迷を極める中、二つの百年企業はいかなる戦略を立てているのだろうか。
江崎グリコの歴史は、創業者・江崎利一によってカキの煮汁に多量のグリコーゲンが含まれることが確認された1919年に遡り、その栄養価に着目した「栄養菓子グリコ」が大阪三越で正式発売された1922年を創立記念日としている。1960年に固形カレールー「ワンタッチカレー」を発売するなど、菓子のみならず乳製品やレトルト食品、サプリメントなども手がけ、「すこやかな毎日、ゆたかな人生」のパーパスのもと、「おいしさと健康」の企業理念を体現するメーカーとして独自の歩みを続けてきた。現在、国内に10拠点13工場を構え、アジア中心に海外で18拠点を展開する。
長期的には、科学的エビデンスに基づく「おいしさと健康」を提供できる商品を上市するという事業構想とそのための研究構想を掲げ、現在は、2022年度を起点とする中期経営計画の第2期「加速フェーズ」に入っている。国内では、顧客接点で得たデータをもとにより高い価値のある商品を創造する顧客起点ビジネスモデルの進化、アーモンドなど素材を起点とする事業バリューチェーンの再構築といった事業戦略のもとで、年間売上高5〜8%増、営業利益10〜15%増を目指しており、国外では中国ASEAN諸国での売上向上に加えて、次の成長市場に見据える北米での基盤を構築したい考えだ。
一方、モロゾフは、神戸の菓子店経営者でロシア人のフョードル・モロゾフ、商工会議所常議員だった葛野友槌が1931年に共同設立した神戸モロゾフ製菓を母体とする。まだチョコレートが珍しかった当時、モロゾフ氏のつくる美しいチョコレートは贅沢で高級なギフトというジャンルを生んだ。翌年には日本初のバレンタインデー用チョコレートを発売、戦後はカスタードプリンやチーズケーキ、クッキーなど同社を代表する商品を手がけ、日本の代表的スイーツブランドの1つに成長した。
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