レンタカーを伝統工芸で内装 観光事業に参入した中古車販売店

秋田県の伝統工芸の技術を使って車内を装飾した「ご当地レンタカー」。今後、その事業モデルを全国に展開し、各地の活性化につなげていくことも計画されている。レンタカーで地域の魅力を発信するというアイデアは、どのようにして生まれたのか。

鎌田 学(ドラグーン 代表取締役社長)

秋田県で「走る伝統工芸」とも言えるユニークなレンタカーが展開されている。ハンドルとコンソールパネルは、鎌倉時代から約800年続く伝統工芸「川連(かわつら)漆器」(漆を塗布した木器)、ウインドウスイッチパネルは「樺(かば)細工」(山桜の樹皮を使ってつくる木工品)、シートや天井は「秋田八丈」(草木染の高級絹織物)が使われる。

秋田の伝統工芸で車内空間を贅沢にしつらえたそのレンタカーは『AKITAご当地レンタカー』と名付けられ、2017年8月にスタート。運営するのは秋田市で中古車販売等を営む企業、ドラグーンだ。

中古車販売の事業者が、なぜ観光専用のレンタカー事業に参入したのか。きっかけは2015年7月、ドラグーン・鎌田学社長の元に、川連漆器の若手職人が訪ねてきたことだった。

「クルマ×観光」で事業を発想

「川連漆器の職人さんたちは、伝統工芸が日常生活から切り離されていることに危機感を覚え、漆塗りのスマホケースなど、新しい用途開発に力を入れていました。その1つとして、川連塗りを使った自動車の内装部品を考えていて、事業化の可能性を相談されたんです」

そう振り返る鎌田社長だが、当時はそれをどう商品化し、どう訴求すればいいのか、自身も判断できなかった。答えを見出せないまま数ヵ月が経った2016年初頭、鎌田社長はあるニュースを目にした。観光庁の予算が増額され、前年度比2.5倍に――。鎌田社長は、観光にはビジネスチャンスがあると直感した。

ドラグーンは地域密着のクルマ店だ。「クルマ×観光」という事業軸で、ドラグーンは何ができるのか。観光バスや観光タクシーは運転手が必要な事業であり、自社で手掛けるのは難しい。しかし「クルマを貸すだけ」のレンタカーであれば、自社でできるかもしれない。そう考えた鎌田社長は、レンタカー業界の調査と分析に乗り出した。

この数年、国内の自動車関連市場は低迷が続いている。しかし、改めて調べてみると、驚いたことにレンタカー市場は拡大が予測されていた。

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