社内ルールは「とにかく自由」。働き方改革で売上を2年で5倍に
本アワードでは、新しい働き方を実践しながら活躍するビジネスパーソン、あるいはそれを推奨している企業を、ソーシャルビジネス部門、ライフデザイン部門、リモートワーク部門、デュアルワーク部門、新事業部門の5つの視点から表彰します。東京ミッドタウン・デザインハブ第71回企画展「地域×デザイン展2018」内にて、受賞者によるトークセッション、および授賞式を開催します。
審査委員
株式会社ニューズピックス、NPO法人ETIC.、一般社団法人Work Design Lab、一般社団法人at Will Work、Fledge運営株式会社えふなな、株式会社日本人材機構
ガイアックスのソーシャルメディアマーケティング事業部は、過去2年で売上高を5倍に成長させた。その要因は、アウトソーシング、リモートワーク、フレックスタイム制などをフル活用した大胆な「働き方改革」だ。1人ひとりが仕事に集中しやすい環境を求め続けた結果辿り着いたのは、"とにかく自由"な環境だった。
生産性と社員満足度を両立
「働き方改革」への注目度が高まる昨今、リモートワークやフレックスタイム制などの導入を検討している企業も多いだろう。しかし、「売り上げが落ちるのでは?」「社員がさぼるのでは?」と危惧している企業も少なくないはずだ。
そのような懸念を一掃する実績を出しているのが、ガイアックスのソーシャルメディアマーケティング事業部である。主にSNSの運用代行やコンサルティングサービスを手掛ける同事業部は2015年9月から労働環境、職場環境の改善を進めた結果、売上は2年で5倍、2年前まで38%あった離職率は0%に下がり、逆に、社員の友人知人を紹介してもらうリファラル採用により、広告費ゼロで13人を採用。また、事業部メンバーの有休消化率は90%で、厚労省が発表する全国平均の48.7%のほぼ倍に近い数値を達成している。
安心して働ける職場に
この改革を推し進めたのが、2015年9月当時26歳、最年少で事業部長に就任した管大輔氏だ。管氏は「労働環境を改善すれば、3年で売上を10倍伸ばせる」と幹部に進言したのがきっかけで、抜擢された。なぜ、26歳の若手が直談判に至ったのだろうか。
「私は13年に新卒で入社してから、この事業部で働いていました。当時は利益を上げるのが最優先で、一人当たり何件を担当できるかを問われていました。そのため業務量が非常に多く、離職率も高かった。そうなると、ノウハウを持った人が辞めていくので、サービスの質が落ちるし、売り上げを伸ばすことも難しい。でも、市場規模は大きいので労働環境を改善してこの悪循環を断ち切れば売り上げはもっと伸びると思ったのです」
事業部長に就任した管氏は、目先のコストは度外視して次々と大胆な策を講じた。
まず取り組んだのは「とにかく、安心して働ける環境を整えること」。当時の事業部メンバー9人のうち正社員は3人でほかは契約社員だったが、希望者4人を正社員として再雇用。また、仕事を休んでも、ミスしても、給料は下げないと約束した。さらに事業部自体の数値目標を全員に共有しつつメンバー個人には数値目標を与えずに、査定は互いにコミュニケーションを取りながら、「仕事にどう取り組んだか」を評価する方法に変えた。
「数字を目標にすると、それだけに目がいきがちですよね。評価をするメリットって、成長するための気づきを得られることだと思うんです。評価の基準を変えたことでメンバーとのコミュニケーションが増えて、互いに理解が深まりました」
自由だからこそ助け合う関係に
メンバーの業務量とストレスを減らすために、クラウドソーシングとリモートワークも徹底して取り入れた。例えばクラウドソーシングは、費用の上限ではなく「下限」を決めて、全員が利用することを義務化。「自分がやるべき仕事に集中する」ことを求めた結果、クライアントに説明や提案をするためのパワーポイントの作成なども、プロのデザイナーに外注するようになったという。
リモートワークを推進するために、座席数を3分の1に削減。「出社する場合は連絡するように」と通達し、同時に月2万円のリモーとワーク費を支給した。また、リモートワーク用の監視ツールは「絶対に入れない」と宣言した。その効果は大きかったという。
「人間ですから、いろいろな理由で会社に行きたくない日ってあると思うんです。そういう時に好きな場所で自分のペースで仕事ができるようにしました。そうしたら、出社してくるメンバーにイライラしている人がいなくなって、部内の雰囲気が明るくなったんですよ。監視ツールを導入しなかったのは、私自身、そういう社員を縛るような発想が嫌いだから(笑)。そもそもひとりひとりが幸せに働くための改善という前提があるので」
クラウドソーシング、リモートワークともに、導入当初はメンバー間に戸惑いがあったという。しかし、管氏自身が誰よりも利活用することで部内に浸透していった。管氏は昨年、試験的に1ヵ月間、東京を離れたが特に支障がなかったため、最近では「オフィスの必要性を感じなくなりました」。毎週水曜に開催している定例会も、場所貸しサービスを利用して毎回違う場所で行っているそうだ。
管氏が事業部長に就任して2年で、冒頭に記した成果が上がっているが、数字に見えない変化こそが重要だという。
「今では副業もなんでもOKで、ほとんどルールはありません。みんなこの自由や居心地の良さに価値を感じ、手放したくないと思うので、変なことをする人はいないし、メンバー間でも協力的になるんですよ。例えば、たくさん休みたいなら、他のメンバーのサポートが必要になります。そのためには自分も誰かをサポートしなくてはいけない。メンバー同士が助け合って仕事をすることで、チームとしての相乗効果が生まれ、業務の効率や生産性が劇的に高まりました」
3年目となる今年、管氏は新たな取り組みを始めた。これまで自分と副部長2人で判断していた意思決定のプロセスを手放し、部署のメンバー全25人による合議制に変えたのだ。その分、意思決定は遅くなるが、納得感が強くなるので浸透が速くなるという。
「ひとりひとりが幸せに働くための改善」がどこに行きつくのか、管氏にもゴールはわからないが、これまでに培った信頼に揺らぎはない。
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- 管 大輔(すが・だいすけ)
- ガイアックス ソーシャルメディアマーケティング事業部 事業部長