難読自治体の挑戦 広報紙のデジタル化で「情報発信日本一」へ

茨城県東南部に位置する行方市が、地域の認知度を上げるべく取り組んでいるのが『情報発信で日本一プロジェクト』だ。市民一人一人が誇りを持って情報を発信できるまちを目指し、モリサワと協力した広報紙のデジタル化など、さまざまな施策を展開する。

鈴木 周也(行方市長)

市民全員が情報の発信源

『行方市』と見て、すぐに『なめがたし』と読める人はどのくらいいるだろうか。

鈴木周也市長は、「まずはより多くの方に行方(なめがた)市の名前を知っていただきたい。それには、市民が自分たちで情報をうまく発信していくことが必要です」と話す。

行方市は2005年、麻生町、玉造町、北浦町の3町が合併して発足した。合併から12年、少子高齢化が進み、地域のコンパクト化が求められる中、課題や情報の共有、市全体としての一体感がより重要な時代となっている。

同市は2015年度に、市の将来像を見据えた総合戦略(2025年度まで)をまとめたが、策定に当たり市民約100人からなる『なめがた市民100人委員会』を立ち上げた。

「総合戦略には、市民の声を直接入れたいと考えました。市民の考えと温度差のある戦略を作っても、実効性に欠けるからです。これからの厳しい時代を乗り越えていくためには、市民にも地域の課題を"自分事"として捉えてもらう必要があります。議会、行政が三位一体となったまちづくりを推進していきたいと考えます」(鈴木市長)

総合戦略において重点プロジェクトの一つに位置づけられているのが『情報発信で日本一プロジェクト』だ。

行方市は常陸国風土記にも記される、全国でも有数の歴史深いエリア。古くから受け継がれてきた祭りや伝統料理、豊かな自然や農作物など、掘り起こせば、内外へ発信すべき情報は山ほどある。

「情報を外へ出すためには、まず市民自身がこのエリアの良さに気づき、誇りを持たねばなりません。一人一人が地域について誇りを持って語れる。市民全員が情報発信源になって初めて、情報発信日本一になることができるのだと思います」(鈴木市長)

行方市は全国でも有数の歴史深いエリアで、自然や祭りなどの資源が豊富(市内西蓮寺地区の里山風景) Photo by茨城県観光物産協会

広報紙のデジタル化で、市民の地域理解を深める

市民同士、市と行政が一体となり、地域をより深く知り、理解するための情報を共有する。それが、情報発信日本一を目指す、最初のステップとなる。

情報共有化の一環として行方市が行うのが、モリサワの『MCCatalog+』を利用した広報紙のデジタル化だ。

『MCCatalog+』は、広報紙、観光ガイド、地域情報誌など、あらゆる紙媒体をデジタル化し、スマートフォンやタブレット端末に手軽に配信できるクラウドサービス。インバウンド対応の多言語情報発信ツールでもあり、日本語・英語・中国語簡体字・中国語繁体字・韓国語・タイ語の7言語への自動翻訳ができ、多言語対応の音声読み上げ機能もついている。配信した情報は、専用ビューア『Catalog Pocket』で見ることができる。

これまでは発行するものの、なかなか目に留めてもらえなかった市の広報紙。デジタル化は、市の発信する情報を市民全員に届けるための取り組みである。「情報発信の手段はいろいろあっていい。市民が情報を取るためのツールをそろえることで、これまで届かなかった情報を確実に届けることが重要です」(鈴木市長)

広報紙の情報には、地域の魅力や歴史だけでなく、災害時における注意や避難場所など重要な情報も含まれる。そうした情報を確実に市民に届け共有することで、防災面の強化にもつながる。

また、行方市には農業関係で海外からの研修生が多く滞在している。そうした外国人居住者向けに広報紙を多言語化すれば、印刷コストは7~8倍に膨れ上がる。その点、デジタルなら最小限のコストで必要な情報を多言語化することができる。

「外国人居住者だけでなく、今後増えるであろう外国人観光客に向けても効果を発揮するツールと言えます」(鈴木市長)

モリサワの「MCCatalog+」は、紙媒体をデジタル化 し、スマホやタブレットに配信できるクラウドサービス。自動で多言語翻訳もできる

『情報発信で日本一プロジェクト』の一環で行った広報紙のデジタル化。市の発信する情報を子どもからお年寄りまで市民全員に届ける

データ活用は行政の新しい武器に

『MCCatalog+』、『Catalog Pocket』の導入は、これまで難しかった行政と市民との相互通行のコミュニケーションを可能にする意味でも大いに役立っている。

デジタル化することで、どの記事にどれくらいの年代の人が何回アクセスしたのかといったデータが集まってくる。それを市報に反映し、新たなコンテンツ作りに生かす。アクセス時の情報を分析することで、農産品の売り込みや、観光スポットの打ち出し方、隠された地域の魅力など、情報を外へ発信するための戦略を作ることができる。

「情報の共有化だけでなく、ここから収集した情報をうまく回転させ、行政として地域を外へ発信するための武器にしていきたいと考えています」(鈴木市長)

『MCCatalog+』、『Catalog Pocket』をうまく使いこなすことで、これまでの感覚的なまちづくりから脱却し、データの裏付けに基づいたまちづくりが可能になる。

今後は、ツールの多言語対応機能をフルに活用し、広報紙だけでなく、観光情報の発信にも力を入れていく。翻訳機能や音声読み上げ機能のついた『Catalog Pocket』を市民が持つことは、外国人観光客とのコミュニケーションのハードルを下げ、市民自身が地域を海外へ発信するきっかけともなる。

また、行方市は特に歴史の古い地域だ。市が作成した子ども向け郷土資料を多言語化し、海外の子どもたちに行方の文化や歴史を知ってもらい、若いうちからの海外交流を進める取り組みにも力を入れていく。

行方ならではの価値を共有し、市民を巻き込んだまちづくりを目指す。情報発信日本一を掲げた行方市の挑戦は、これからも続いていく。

 

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