山岳救助、ベンチャーが支える 「人の命を守る」新ビジネス
GPSでは実現ができなかった精度で、位置を特定する新しいデバイスを開発。それは、山岳救助の常識を変え、迅速な捜索を可能にする。主要な山岳関連協会・連盟にも採用され、普及が進められている。
登山での遭難救助や災害時の人命救助、子供や要介護者の見守りなど、オーセンティックジャパンは「人の命を守る」サービスを提供している。
オーセンティックジャパンの久我一総社長が開発したのは、新しい人命探索機器『HITOCOCO(ヒトココ)』。それは、登山者や子供などに子機を持たせ、親機がその電波強度から距離や方向を特定するデバイスだ。
「便利」よりも大切なこと
なぜ、久我社長は「人の命を守る」ことを事業領域に定めたのか。
「現代はPCやスマホなど、便利なものが氾濫しています。そんな中で『本当に大切なものは何だろう?』と考えて、出した答えが『人の命を守る』でした。親として、家族として大切な人の安全を確保するためのアイテムが欲しい。そうした思いから、『ヒトココ』のアイデアが生まれました」
久我社長はもともと、大手電機メーカーで商品開発を行っていた。そこでPBX(※)という製品を担当した経験があり、自身が望むデバイスの設計を考えることができた。
久我社長は2011年、オーセンティックジャパンを設立。2013年に『ヒトココ』の試作機を完成させた。
「GPSは広域で探すことはできても、建物の中や地下では大まかな位置しかわかりません。また、本当に必要な機能だけに絞らないと、バッテリーを長持ちさせることはできず、重量は増えてしまいます。人の命を救う商品として本当に役立つものにするためには、そうした課題を解決する必要がありました」
『ヒトココ』の特徴は、まず子機が小さくて軽いこと。重さは20g、100円玉4枚分の重さしかない。さらに災害無線と同様、親機と子機が直接電波で通信を行うため、GPSでは実現ができなかった精度で、位置を特定することができる。
例えば、障害物のない広い場所であれば、「建物の何階、どの部屋のどのあたりにいるのか」といったことを1km先からでも認識可能だ。また、マイクロUSB端子から約500回は充電可能で、モデルにより異なるが1充電で1~3ヵ月も持つという。
(※)PBX(Private Branch eXchange)......企業などの施設内に複数設置され、電話機同士で内線通話ができるようにしたり、外線との接続を行ったりするために使われる電話交換機。
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