2017年8月号

2020キャッシュレスイノベーション

旅行者ニーズに応える観光地マーケティングの要は決済環境の整備

野口 知希(国土交通省 北海道運輸局 観光部 観光企画課 課長)

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訪日外国人旅行者が急増する中、主要観光地でも十分な受け入れ環境が整わず、ビジネスチャンスを逃しているケースが少なくない。北海道運輸局では昨年度、その要因の1つである「決済環境」に焦点を当て、調査・実証事業を実施した。

野口 知希(国土交通省 北海道運輸局 観光部 観光企画課 課長)

釧路、ニセコ、斜里、弟子屈で
決済環境調査事業を実施

外国人旅行者が急増している北海道では2015年3月、「訪日外国人旅行者数2000万人の受入に向けた北海道ブロック連絡会」が立ち上げられた。連絡会には、北海道運輸局など国の機関や地元の自治体、交通や旅行、宿泊等の関係事業者・団体などが参加し、現状と課題の把握や迅速な対応策の検討を行ってきた。

具体的な課題としては、宿泊施設の拡充、空港や駅から観光地や宿泊先へ向かう際の二次交通の利便性向上、キャッシュレス環境整備などが挙げられた。キャッシュレス環境に関してはヒアリングの結果、主要な観光地でも「地元の商店での買い物にクレジットカードが使えるところが少ない」という声が目立った。

「キャッシュレス環境整備問題は、外国人旅行者の急増に伴い、急激に顕在化してきました。そして海外からの旅行者を取り込み、その消費を通じて地域経済を活性化していくには、決済環境の改善が不可欠であることを連絡会で把握しました」。北海道運輸局観光部観光企画課課長の野口知希氏は、キャッシュレス環境整備の重要性をこう指摘する。

このような中、同内各地でどの程度、環境整備が進んでいるのかについて基礎的なデータを取集、把握し、決済環境を充実させる手立てを検証するため、昨年度は決済環境調査事業(図1)を実施した。

図1 2016年に実施した決済環境調査事業の流れ

出典:決済環境調査事業報告書より編集部作成

「勘」と「経験」の判断を
データに基づいた判断に

「観光業界では現状について、わかっているようでわかっておらず、感覚でものを言うことが多いと感じます。しかし、予算や人的資源を投入する取り組みを開始するには、実態に基づいて判断・実行することが重要です。このため、決済環境改善に向けて実態を把握し、オープンなデータとして共有するために実態調査、実証調査を行いました」

実態調査は事業者と外国人旅行者の双方を対象とし、道内の主な観光地で実施した。具体的には、国の「観光立国ショーケース」に選定され、クルーズ船も寄港する釧路市、外国人の長期滞在者が多いニセコ地区、世界自然遺産の知床を抱える斜里町、摩周湖がある弟子屈町の4地域を調査対象とした。

このうち釧路市では、カード決算端末等の設置による実証調査も行った。これら4地域では、訪れる外国人の出身国や地域に違いが見られ、その違いは決済環境をどう整えていくべきかいう点にも影響する。

旅行者のニーズ応える
観光地マーケティングの要

実態調査では、カード端末を導入していてもカードが使用可能なことを明示していないため、外国人旅行者から「クレジットカードが使えない」と思われるケースも少なくないことがわかった。事業者の中には、特に少額の買い物では手数料負担を敬遠しクレジットカードを利用してほしくないと思っているところもあった。

「目の前に来たお客さんが『クレジットカードが使えない』と思って素通りするのを、放っておくのはもったいないことです。旅行者から『ここはもう行かなくて良い』と思われれば、次の旅行の機会には行程にも入らなくなってしまうでしょう」

リピーターを含む長期的な視点に立って、地域全体で外国人旅行者の消費を取り込んでいくには、決済環境の整備が求められる。そのための意識を向上させるには、商店街組合や商工会議所、自治体などが関わり、地域全体でサービスを改善していく必要だ。

一方、釧路市で行った実証調査では、クルーズ船が入港する地点にある商業施設でカード端末の導入や表示を進めたほか、クレジットカードが使用できる店がわかる多言語の地図を作り、旅行客に配布した。またクルーズ船の入港時には、英語と中国語の通訳ボランティアも配置した。

タクシーに関しては、全車両へのカード端末設置は難しい中、クルーズ船が到着する場所に端末を設置し、定額観光コースのタクシー運賃を事前にカード決済する工夫も取り入れた。「これらの実証調査を経て、決済端末等の普及モデルを策定し、今後の事業者自身による継続的な取り組みへのきっかけづくりができたと思います」。

近年の傾向としては、団体旅行から個人旅行への旅行形態の変化がみられ、個々の旅行者のニーズを丁寧に聞き、把握することの重要性が増している。それらは統計的なデータとして処理し、次の取り組みに活かすことが求められる。「要するに、地域としてのマーケティングが必要になっているということです」。事業の報告書では、地域特性×業種別による決済端末の普及モデルも記載されている。(図2)

図2 決済端末等の普及モデル~「地域特性×業種別」による展開~

出典:決済環境調査事業報告書より編集部作成

観光を振興していく中で、「次の手は何か」という問題意識を持ち、継続的にレベルアップをはかることが重要となる。それらの取り組みを通じて旅行者の消費を取り込み、雇用創出にもつなげ、地域全体を盛り上げていくべき時代となっている。

 

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