2016年9月号
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プロジェクトニッポン 島根県

超過疎100集落で人口増の県 地域特性に見る「強み」と「弱み」

嶋田 淑之(自由が丘産能短期大学・教員、文筆家)

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伝統的な特殊鋼の技術など、世界に誇る産業を有する島根県。しかし近年は、産業振興、社会基盤整備に課題を残し、財政面でも苦境にある。そうした中で、「人口増」の地区が多数出現していることは、特筆に値する。

島根県と言えば、世界遺産「石見銀山遺跡」、縁結びで有名な「出雲大社」、日本最大のシジミ産地「宍道湖」、“日本三大美人の湯”「湯の川温泉」や「玉造温泉」「温泉津温泉」などの名湯群、そして、米国の日本庭園専門誌が行っている日本庭園ランキングで、桂離宮を抑え、13年連続で庭園日本一に選出されている「足立美術館」など、豊饒な観光資源がイメージされる。

また、近年は、離島(隠岐)への大企業エリートたちのU/Iターンと、それを契機とする地域活性化が全国的な話題になっている。

「住みやすさ」でも日本有数とされ、“一見幸福そう”な島根県であるが、実は「待ったなし」の厳しい状況に置かれている。

県民1人当たり借金額日本一

住民1人当たり借金ランキング1位、財政力指数47位。地方債発行額(2012)1位。地方交付税額(2012)1位。公共事業費(2011)1位。財政状況は非常に厳しい。

人口動態に目を向けるならば、1955年の92万9000人をピークに減少局面へと移行。現在、人口69万3000人と、日本で2番目に人口が少ない。高齢化率は2位。社人研の推計では、同県人口は、2040年52万人、2060年39万人と急減。県による施策がことごとく成功した場合の予測でも、2040年55万人、2060年47万人と、今後の著しい人口減少はもはや避け難い。

これを反映してか、農業産出額は過去約30年間で約40%減少(産出額46位)、林業産出額は過去約30年間で約60%減少。漁業の産出額も過去30年間で、実に約73%減少している。製造業に関しても、就業者数は約20年間で、43%減少。工業生産額(2013)は34位、製造業1事業所当たり出荷額(2013)も38位と低迷している。

卸売業・小売業・サービス業の企業数・従業者数は全国平均を上回るが、生産性は低く、大型小売店数(人口10万人当たり)も47位。

また、経済活動や県民生活を支える社会基盤整備という点でも状況は厳しい。「高速道路供用率」は全国38位の低水準。東西に長い島根県は、海岸沿いに主要都市が存在しているが、それらを結ぶ「山陰道」の県内供用率も56%に留まる。早期の全線開通が望まれるが、国の2030年度整備計画でも67%にしか達しない予定である。一般国道・県道の改良率も40位と全国最低水準。

医療サービスに関しても、中核都市ですら特定診療科の医師不在が目立つ。それ以上に離島・中山間地域における医師不足は深刻で無医地区数19を数え、「医療難民」群が存在。

厳しい財政状況と、早急な対応が必要な産業振興・社会基盤整備など山積する課題。一部の県民の間では鳥取県との「合県」案も出るほどの現在の島根県。

かつては世界市場を席捲

同県では、弥生時代初期から製鉄が行われていた。砂鉄をベースに、熱源として木炭を用い、「踏みふいご」を吹いて製造する「たたら製鉄」である。

それが島根で発展したのは、同地の砂鉄が非常に高品質であったことと、同地が山間にあり大量の木炭を調達できたことによる。同地で生産された「玉鋼」は、日本刀の材料鋼として最高品質を誇り、江戸時代後期には、北前船で安来港から新潟の三条、福井の武生、大阪の堺、岐阜の関、兵庫の三木などの金物産地に輸送された。

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