2016年8月号
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プロジェクトニッポン 奈良県

「筆ぺん」「液体墨」を考案 筆記具メーカー呉竹の経営哲学

綿谷 昌訓(呉竹代表取締役社長)

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液体墨や筆ぺんなどの商品で知られる筆記具メーカー、呉竹。筆や墨の開発で培った技術を応用し、近年はアート&クラフト市場や、産業用途商品でも業績を伸ばす。そのインベーションの原動力はどこにあるのか。

墨造りからスタートした呉竹。世界に市場を広げる現在も、創業当時の技術や精神を大切にしている

「墨」は奈良を代表する伝統産業だ。飛鳥時代に中国から製法が伝来し、政治の中心が京都に移ったあとも、社寺が集積する奈良は学問の中心として栄え、墨造りも地域で脈々と受け継がれていった。

呉竹は、明治35年(1902年)に墨造りを家業として創業。戦後には液体墨や筆ぺんなどの革新的商品をヒットさせ、現在は書道用品を中心に、筆ぺんやペンなどの幅広い筆記具を製造・販売している。

「墨屋から始まった当社ですが、もとは大手製墨業者の下請けを行っていました。事業のすべてが元請けに左右される状況のなか、『何か新しいことをしなければ』という思いは、創業当時から持ち続けていました」と話すのは、呉竹の綿谷昌訓代表取締役社長。

綿谷 昌訓 呉竹代表取締役社長

時代の変化を捉えた新商品開発

数百年の歴史を持つ企業も珍しくない製墨業界で新規参入者が生き残るためには、絶え間なき革新が必要だった。そのために呉竹が行ってきたことは、ユーザーの声をよく聞き、時代の変化を捉えること。例えば1958年に発売した液体墨「墨滴」。墨を磨る作業を省ける画期的な商品は、学校教員の声をヒントに開発されたという。

1973年に発売し、今や冠婚葬祭に欠かせない存在となった「筆ぺん」は、呉竹が起こしたイノベーションの代表例である。

当時は、多彩な筆記用具の登場で筆や墨を日常的に使わなくなり、筆文字を書くことを苦手とする人が老若男女を問わず増えていた。しかし一方で、結婚式や年賀状など、筆文字がふさわしい場面は暮らしの身近なところに存在していた。

「筆をとるのが苦手な人でも、手軽で簡単に筆文字が書ける筆記用具ができないか」という社員の発想から、筆ぺんのコンセプトが生まれた。

創業以来培ってきた墨造りの伝統と、当時最先端であったサインペンの技術を組み合わせた筆ぺんは狙い通り大ヒット商品となり、「くれ竹筆ぺん」のブランドを全国区に押し上げた。

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