楽天が描く地域活性化への道、ふるさと納税×ECの戦略的活用
大手百貨店を凌ぐ流通額と、20年の経験で培われた販売ノウハウを強みとする楽天。昨年7月に専用サイト「楽天ふるさと納税」を開設し、満を持してふるさと納税事業に新規参入した。同事業の旗揚げ役が語る、ふるさと納税の出口戦略とは。
「ふるさと納税はいつまで続くか分かりません。制度があるうちに、ふるさと納税の次のステップを考える必要がある。ネクストステップとしてECを挙げる自治体がありますが、そのソリューションを提供できるのは、巨大なECプラットフォームを持つ楽天だけだと自負しています」と語るのは、楽天市場事業 事業開発部 部長の石角裕一氏。制度がなくなることも視野に入れ、事業者が自立的に発展できるよう、ふるさと納税を戦略的に活用するべきだと力を込める。
インターネットを通じて、人々と社会に力を与える――。その企業理念には「地方を元気にしたい」との思いが垣間見える。1997年の創業以来、楽天は全国津々浦々の中小企業や個人事業主を対象に、EC事業を支援するためのさまざまなサービスを展開してきた。特徴的なのは、IT企業には珍しく対面でのサポートに注力している点だ。
「商品ジャンルに特化した専任のECコンサルタントが、約4万5000社の出店者と二人三脚で店舗運営を推進してきました」。
ECコンサルタントが持つ豊富な知識と経験に加え、楽天独自のECシステムから顧客の購買行動や客単価を徹底的に分析し、戦略的な提案を行うことで、無名の店舗が販路を全国区へ拡大した事例は数知れない。
国内最大級のECモールのシステムをふるさと納税に
国内最大級のECモール運営事業者として地方活性化に貢献してきた楽天だが、ふるさと納税の未来を見据え、昨年7月末にオープンしたのがふるさと納税専用サイト「楽天ふるさと納税」だ。同サイトでは、楽天市場での買い物と同じ流れでふるさと納税の手続きが簡単に行え、寄付金額に応じて楽天スーパーポイントが付与される。事業開始から1年ながら、提携先は契約ベースで約100自治体に達する。すでに多くのポータルサイトが開設されている中、ふるさと納税事業に新規参入したのはなぜか。
「出店者の和歌山県北山村から、ECサイトのシステムを使ってふるさと納税を始めたい、という問い合わせをいただいたのがきっかけでした。約4万5000社の出店者が利用するECシステムを活用し、楽天市場内にふるさと納税ページを作る。そして、これに呼応する物販ページを立ち上げる。入口を2つ用意し、双方をシームレスに行き来できる状態にすれば、双方からファンを獲得することができると考えました」
さらに、出店者向けの学習ポータルサイト「楽天大学」、お取り寄せグルメなどを扱うウェブ上の「ご当地物産展」、東京都・渋谷の「楽天カフェ」で実施する自治体とのイベントなど、楽天グループの経営資源は多岐にわたる。これらを組み合わせることでネットとリアルの両面から包括的なサポートができる、と石角氏は自信を見せる。
図1 楽天側ページからふるさと納税・ECページに誘導
知識の習得や情報共有、自治体同士の交流の場も整備
通常のECサイトでは、商品の味や鮮度はもちろん、商品の説明文や写真、サイトのデザイン、問い合わせ対応、梱包の方法など、どれも高いレベルが要求される。楽天のふるさと納税を利用すれば、それらを通販と遜色ないレベルにすることが可能だ。
「ECサイトの世界では、注文直後にお礼の連絡を入れ、在庫がない場合は発送日までの目安を知らせ、発送後は荷物番号を通知するというように、メールを3回送るのは常識です。しかし、ふるさと納税の場合は届くまでに平均で1ヶ月半掛かり、その間、連絡をしないことも多い。これでは寄付者の不満は募るばかりです。ふるさと納税に本気で取り組むなら、BtoCでは当たり前のことを学んでいただくことが重要です」
こうしたノウハウを共有したり、ふるさと納税の担当者同士で交流できる場を提供したいとの思いから、今年3月に楽天本社で初の自治体サミットを開催した。自治体の事例紹介やページ作成のコツなど、さまざまなセミナーを実施したが、とりわけ関心を集めたのは、実際のユーザーレビューから改善点を探るセミナーだったという。「注文から3日後に届いて嬉しかった」「申告書の返送用封筒に切手が貼られていて、他の自治体より親切」といった生の声が紹介された。
石角氏は「レビューには喜びの声だけでなく、商品やサービスに対するお叱りやご不満の声をいただくこともあります。しかし、これらを真摯に受け止めることで、商品やサービス改善のヒントが学べることをお伝えしたかった」と振り返る。今後は6ヶ月に1度のペースで定期的に開催する予定だ。
経験に裏打ちされたノウハウでストーリーづくりをサポート
肉や魚、野菜といった返礼品のメニューを増やしても、1次産品はどこも似たり寄ったりになりやすい。地域が差別化を図る秘策はないものか。この問いに対し、石角氏が挙げたのが前出の和歌山県北山村の特産品だ。
村に1本だけ残っていた新種の柑橘類、じゃばら。そのネーミングは邪気を払うほどの酸っぱさに由来する。これを特産品にしようと、栽培や加工品の開発を進めたものの、思うように売れず思い悩んだ北山村は、最後の望みをかけて2001年1月に楽天市場に出店。オーガニックブームなどの後押しもあり、出店から5年で2億円超の売上を叩き出したのだ。北山村固有の品種、1本の原木からスタートした栽培、トレンドマッチした話題性や口コミ――。こうした魅力的なストーリーづくりをサポートできるのも楽天の強みだろう。
「今後はふるさと納税ページとECサイトを組み合わせた“総合物産展”の実施を実現させたい。楽天市場内の各ページやメール、SNSなどを使って効果的に集客していきます」
図2 今後の楽天ふるさと納税の展開
お問い合わせ
- 楽天株式会社
- 楽天市場事業 ふるさと納税事業グループ
TEL:050-5817-7775 - Mail:ichiba-furusato-nouzei@mail.rakuten.com
- URL:http://event.rakuten.co.jp/furusato
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