ふるさと納税を起点に、地域構想を「共創」で実現

ふるさと納税業務代行サービスを入口に自治体が目指す地方創生を側面から支える事業への展開を目指す「さとふる」が2016年6月6日に西日本営業所を開設した。所長の西川拓馬氏に「ふるさと納税」を取り巻く現況と、今後目指すサービスの方向性を聞いた。

西日本エリアの自治体のより一層のニーズに応えるために西日本営業所を開設した

2008年に始まったふるさと納税制度。生まれ育った故郷や、サポートしたい自治体への寄付を通じて地域を応援できる趣旨が浸透しつつあることに加え、各自治体が競うように返礼品を充実させていることも手伝って、2015年の寄付総額は前年の約4倍に当たる1,650億円に達した。

ソフトバンクグループのさとふるは、「ITで地域社会に活力をもたらす」をコンセプトに2014年7月に設立。現在は、ふるさと納税を推進し地域活性化を促進するための総合サイト「さとふる」の運営を主力事業とし、各自治体にとって煩雑なふるさと納税の受付から返礼品の発注、発送、決済までに至る諸業務の代行を受託しているほか、様々な形での情報発信を通して当該自治体の魅力を広く寄付者に知ってもらうなどの支援を行っている。「さとふる」を利用している自治体は現在90に迫っており、8月までには100の大台に乗る勢いだ。

問われる地方創生への道筋

西川拓馬 さとふる 西日本営業所所長

制度のスタートから8年目を迎えた「ふるさと納税」について西川氏は「中央から再配分された交付金を年度ごとに使い切るという受け身一辺倒の発想だったのが、自分たちの知恵と工夫次第で独自に財源を確保できるようになったことで、自治体の自主性を促すことにつながっている」とその意義を強調したうえで「お金が集まればよしではなく、これを契機にどのように自らの地域の魅力を発信し、知ってもらい、地域の息吹をじかに触れてもらい、感じてもらい、ひいては地方創生につなげていくかが、これから問われてくることになる」と語る。

同社が西日本営業所を開設した狙いもまさにそこにある。「自治体の実情を知り、自治体の方がどこを目指しているのかを把握し、地方創生のためにどのようなアドバイスやサポートができるかを寄り添いながら考えていくためには、足しげく通うための拠点が必要だった。地域の方々と密にコミュニケーションをとり信頼関係を築くところから我々の仕事は始まる」と西川氏。

事業者の自立につながる支援も

具体的にどのようなサポートをこれまで手掛けてきたのか。西川氏が一例としてあげるのが徳島県阿波市の事例だ。同市では2015年度、地元産の農産物や加工品に市の"お墨付き"を与える「特産品認証PR制度」を設けた。この創設にあたり、認証審査会のメンバー構成や選考基準の設定など認証までのプロセスについてさとふるが側面的なサポートを行った。また、認証された特産品については市へのふるさと納税の返礼品としても活用し、情報発信面でも後押ししている。

「そのほかにも、各地域において、これまでインターネット上のポータルサイトを活用することを知らなかった小規模の農業、漁業従事者にこそ当該サイトをできるだけ活用していただきたいと考え、サポートをしています。これまで広く一般に知ってもらえる機会を持たなかった事業者に、自分たちのつくり上げたものが全国レベルで戦える可能性があることに気づいてもらうことによって、継続的なチャンス拡大につながっていけば」と思いを語る。

自治体の人づくりこそカギ

集まった寄付金をどのように生かすかについては、まだしっかりとした方向性を見いだせていない自治体も多い。「寄付者は、思い入れのある地域のためにお金がどのように使われたのかまでをしっかり見ている。使途が見えなかったり、ひとまず基金を設けて積み立てるというような姿勢をいつまでも続けていると振り向かれなくなる可能性もある。重要なことは地域をどのようなまちにしていくのか明確なビジョンを示し、そこに効果的にお金を投じていくことだ」と指摘する。

さとふるはそこでどのような役割を果たせるのか。「弊社が主体的に自治体に対してこういうビジョンにしましょう、ここへお金を使いましょうと導くのは少し筋違いではないかと考える。地域の主役はあくまでも地域。その地域を支える自治体も含めた関係者が自らの力でビジョンを考え、団結することが大事。そのきっかけづくりとともにビジョンの実現に向けて継続的に取り組みを行う仕組みづくりをすることが弊社の役割だと考えている。これまでも話してきたように「寄り添う」というスタンスが重要だ」。西川氏がこのように話すのは、東日本大震災後にソフトバンクグループの孫正義代表の呼びかけで設立された東日本大震災復興支援財団の仕事に携わり復興支援の実情を目の当たりにしたからだ。

「外部の事業者にすべてを委ねてしまったがために、いざ事業者が撤退すると現場に大きな混乱をもたらしてしまう地域を見てきた。だからこそ、自治体の中に自律的に考え、行動できる人を育てることこそが地方創生のカギを握る」と説く。

さとふるがこれまで100近くの自治体と深くかかわってきた中で培ってきたノウハウや、他自治体の先進事例、さらにはふるさと納税のポータルサイト「さとふる」を活用した解析データの提供を通じ、「自治体の職員が本来エネルギー注ぐべきビジョンづくりとその実行に集中できる環境をつくっていきたい」。真の地方創生に向け、さとふるの果たす役割に期待が集まる。

阿波市では「特産品認証PR制度」を設置

 

お問い合わせ

  1. 株式会社さとふる
  2. 西日本営業所 TEL:06-6292-5551
  3. 本社 TEL:03-6895-1882
  4. URL:http://www.satofull.jp/
  5. Mail:contact@satofull.co.jp

この記事に関するお問い合わせは以下のフォームより送信してください。

全文をご覧いただくには有料プランへのご登録が必要です。

  • 記事本文残り0%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。