2016年5月号
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プロジェクトニッポン 福井県

「一億総活躍社会」を先駆ける幸福県 福井の「強み」と「弱み」

嶋田 淑之(自由が丘産能短期大学・教員、文筆家)

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各種の「幸福度」調査で1位になるなど、“日本のブータン”とも言える福井県。そのあり方は、「一億総活躍社会」のモデルにもなり得る。一方で、観光の集客力に課題を残すなど、さらなる強化が必要な分野もある。

日本の大多数の県が、少子高齢化、人口減少、過疎化、地域経済衰退に苦しんでいるのは周知の通りである。それゆえに、県外大企業の誘致や先端産業クラスター形成に腐心しているのが一般的な姿と言ってよいだろう。

ところが、そうした県外勢力に依存せず、しかも、人口が減少しているにもかかわらず、常用労働人口は逆に増加傾向にあるという県が存在する。福井県である。

自律・自己完結型の“幸福県”

福井県では、子どもの頃から、よく学び、そして、身体作りにも力を入れ、小・中学生の学力・体力ともに全国1位である。長じては、現代日本の非婚化・晩婚化、高離婚率とは無縁とばかりに、昔ながらの、「結婚し、子を産み、育て、伴侶と添い遂げる」風土が今なお生き続けている。

伝統的な“三世代同居”を堅持しており、高齢者は健康長寿を謳歌し、また、他県によくある男尊女卑も少なく、女性の社会進出が盛んだ。

結果、世帯を挙げて仕事に従事することとなり、浄土真宗の信徒が多かったことに由来する我慢強さ・勤勉さもあって、低賃金・長時間労働によく耐え、全国1位の世帯収入を得ている。

県産業界の姿勢もユニークだ。同県には地元発祥の大企業はほとんど存在せず、多数の中小企業群が生産活動の中核を担っているが、労使一体を基本とし、リストラもせず、従業員を“正社員”として終身雇用している(非正規雇用率47位、2012)。

そして、それを支えるのが、それら中小企業群の卓越した技術力・経営力であり、織物・ニット・染色・レース・紙・プラスチック製品・電子部品・デバイス・メガネ・漆器など、53品目で全国シェア1位、13品目で世界シェア1位となっている。

その雇用吸収率は高く、結果、同県の有効求人倍率は全国でもトップクラスである。県外から大企業を誘致する必然性はなく、県民のニーズがあれば、ノウハウなどなくとも、県内企業が積極的にその分野へと進出し、高い利益率を叩き出してしまう。下着など衣料品に始まり、健康食品や化粧品、酒類や中古車の販売、カルチャーセンターや保育所、障がい者就労施設までを手掛けるエル・ローズはその典型だ。

こうして福井県では、高い世帯年収と、正社員としての終身雇用による将来を見通せる物心両面での安定感・安心感が、“県内自律型・自己完結型の幸福感”を創出している。

1998年まで続いた経済企画庁「豊かさ指標」で5年連続1位、また近年では「幸福度ランキング」で1位となり、「子供の幸福度」でも1位に輝いている。自殺者数46位(2013)という数字でも、それは裏付けられる。

2015年、安倍政権が打ち出した「一億総活躍社会」とは、日本全国が、この福井県のような様相を呈することを想定しているようにさえ見える。

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