「幸福度日本一」の福井県、成長産業の創出に力を注ぐ

繊維や眼鏡フレームなどの産業集積の基盤を活かし、宇宙・医療などの先端産業を強化。また、「恐竜」など福井が持つ「宝」の魅力を引き出し、観光の競争力を高める。西川知事は、「幸福度日本一」の福井から、成長の新たなモデルを発信する。

西川一誠(福井県知事)

――福井の産業について、成長を支える原動力は何ですか。

福井の産業は、国内最大産地である繊維産業、国内生産量の9割以上のシェアを持つ眼鏡フレームをはじめ、電気機械、化学など、付加価値の高い産業が集積しています。県内には、国内外でシェアトップを誇りオンリーワンの技術を持つ中小企業が数多く、また、社長輩出数は34年連続日本一であり、これらの企業や経営者が福井の元気な産業を支えています。

なかでも、これまで培ってきた技術を応用して先端産業への新規参入を目指す企業が増えており、さらなる成長の原動力になっています。

福井では、こうした産業基盤をベースに新たなイノベーションを生み出すため、次への展開を強力に進めています。その1つが、昨年6月に設立した「ふくいオープンイノベーション推進機構」です。産業界、学界、金融界および行政が力を合わせ、新たな事業創出を目指しています。

――どのような分野で成長産業の創出を進めていますか。

推進機構では、既にいくつかのプロジェクトが始動しています。ここでは具体的に3つ紹介します。

1つ目は、「宇宙産業」への県内企業の参入促進です。現在でも防音材やアンテナ材、耐熱電子部品など、福井の技術が宇宙関連機材に利用されています。4年後の「超小型人工衛星」の打ち上げを目指し、JAXAの協力を得ながら、人工衛星の製造や衛星データの活用について研究・開発に乗り出します。

2つ目は、医療産業への参入です。眼鏡のチタン加工技術や県工業技術センターと大阪大学との共同研究によるレーザー接合技術などを活用し、軽くて強度がある「外科用手術器具」の商品化を進めています。また、繊維技術を活かした先端医療分野でも福井は先進県です。テレビドラマ『下町ロケット』でも、経編技術による心臓の人工弁を開発する福井の繊維メーカーがモデルになり話題となりました。

3つ目は、織り技術を応用した炭素繊維複合材料の新たな展開です。福井県が特許を所有する開繊技術などを応用し、航空機ジェットエンジン部品の開発や橋梁の補修・補強技術の開発を目指します。

福井には「恐竜博物館」や「大本山永平寺」などの観光資源が存在する

伝統工芸産地の連携に可能性

――地域特有の産業は何がありますか。

古い時代から受け継がれてきた伝統産業が数多く残っていることも、福井の特長です。県内には、全部で7つの伝統工芸産地があり、なかでも越前和紙は、1500年の歴史を誇り国内最大の生産地となっています。世界遺産登録に向け、独自の技法を保存・継承する団体をつくるなど準備を進めています。

この越前和紙のほかに、越前漆器、越前打刃物、越前焼、越前箪笥の5産地が、鯖江市・越前市・越前町の集中したエリアに集積していることも、全国的に珍しいと言えます。加えて福井県西部の若狭地域の小浜市には、若狭塗と若狭めのう細工があります。ここは2007年のNHK朝ドラ『ちりとてちん』の舞台にもなり、全国の8割以上の塗箸を生産しています。

これらの伝統産業は1つ1つの産地規模は小さいですが、それぞれを組み合わせたり、食・観光と結びつけることにより、新しい付加価値をつくり、人を惹きつける独特の魅力が生まれます。これらの産地が連携したモノづくりや人材育成に力を入れ、産地全体を元気にする活動を応援していきます。

――食のブランド化をどのように進めていきますか。

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