洞窟探検を観光化 沖永良部島で成長する新ビジネス

鹿児島市から南へ552km、離島の沖永良部島は観光地として大きなハンデを抱える。しかし、住民も気づかなかった「洞窟」という地域資源を観光に活用、絶景が楽しめるケイビングツアーに仕立てあげ、誘客に成果を挙げている。

沖永良部島「大山水鏡洞」。天然のプールにライトを仕掛け、絶景を作り出した

鹿児島県・沖永良部(おきのえらぶ)島は、鹿児島と沖縄からの直通便でしか訪れることのできない人口7,000人ほどの離島である。鹿児島からは飛行機で片道3万円以上、渡航費を抑えて船で向かう場合は約17時間を要し、主要都市から訪れる観光地としては不便な場所に位置する。

しかし、長年ダイビングの穴場スポットとして人気があり、ベテランダイバーを中心に年間2,000名ものダイバーが訪れる場所でもある。今回はそんな沖永良部島で、観光の目玉商品として注目を集めつつある、ダイビングではないもうひとつのアクティビティに注目した。

ケイビングをスポーツから観光に転換

沖永良部島には大小400を超える洞窟が存在する。その中でも「大山水鏡洞」という洞窟は総距離において国内で2番目の規模を誇る。この資源を観光商品として活かそうと企画されたアクティビティが、今回注目した「ケイビングツアー」だ。専用の装備を身に付け、ガイドと共に洞窟内を探検する。国内では山梨県の富士風穴や、岐阜県の美山鍾乳洞などが有名だ。

沖永良部島のケイビングツアーの特徴は、見る者に強烈な印象を与える「絶景」にある。本ツアーの企画とガイドの育成に携わる、日本ケイビング協会会長の吉田勝次氏は、絶景の誕生秘話を次のように話す。

「通常のケイビングツアーは観光よりもスポーツとしての要素が強く、そこで見られる景観にはこだわっていません。しかしアクセスの悪い離島で同じことをしても、お客様はわざわざ足を運んでくれません。沖永良部島の洞窟には、ツアーのゴール地点にもなっている巨大な空洞と、その中に多数ある天然のプールという特徴がありました。それをどうしたら魅力的に見せられるか工夫を凝らす中、手持ちの水中ライトをプールに入れてみたところ、これまで見たことのない幻想的な景観が浮かび上がりました」

吉田勝次 日本ケイビング協会会長

この絶景をツアーの売りとするために、吉田氏はガイド育成の際に、ケイビングの技術や安全面の指導、接客の心得だけではなく、写真の撮り方を念入りに指導してきた。

絶景を見た思い出は、体験中はもちろん、体験後に写真を見た時により深まるもの。この写真を演出する鍵となるのが水中ライトだ。水中ライトは1本につき1時間程度しか持続しないため、短時間でいかに効果的なライティングを施せるか試行錯誤を重ねた。今では全てのガイドが洞窟内の状況に応じてライトを置くべき位置や角度を正確に把握している。

努力の甲斐あってテレビを始め多数のメディアにも取り上げられ、客足も着実に伸びている。「ツアーを始めて5年が経ち、2015年には1年間で600名強のお客様に来ていただきました。まだ数は多くありませんが『いつか体験してみたいケイビングといえば沖永良部島』というイメージが広がりつつあります」と手応えを感じている。

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