世界から滋賀へ、滋賀から世界へ 「水・環境」で新ビジネス

日本最大の湖、琵琶湖を有する滋賀県。三日月知事は、水環境ビジネスの振興によって、県を「ウォーターバレー」にすることを目指しつつ、各産業の海外展開も強化。また、観光資源としての琵琶湖の潜在力を引き出し、インバウンドにも力を注ぐ。

三日月大造(滋賀県知事)

――滋賀の「強み」について、どう捉えていますか。

滋賀の強みは、大きく5つあります。

1つ目は、「人のことを思いやり、未来のことを考える県民性」です。滋賀には、日本で最も大きく、最も古い湖、琵琶湖があります。275億tもの水をたたえる湖は、近畿・約1450万人の水源となっています。そうした水資源を預かる県だからこそ、人のこと、未来のことを考え、環境を守る意識の高い住民がたくさんいます。

2つ目は、「未来を創造する技術、ノウハウがある」こと。パナソニック、京セラ、東レなど、日本を代表する企業の工場や研究所が集積しています。県民総生産に占める第2次産業の比率は、40.9%で日本一です。

3つ目が、「歴史と文化」です。県内に点在する国宝や重要文化財は818件。東京、京都、奈良に次いで4番目の多さで、文化財の宝庫と言えます。さらに、古くは松尾芭蕉、近くは白洲正子や井上靖など、多くの文化人に愛された地でもあります。特に作家の司馬遼太郎は滋賀に強い愛着を持ち、名作『街道をゆく』は、近江国(現在の滋賀県)から始まり、6巻にわたり県中を訪ね歩きました。

4つ目は、「地の利」。近畿、中部、北陸の結節点に位置し、古くは東海道、中山道、北陸道が合流する陸上交通の要衝でした。現代も、滋賀と大都市を結ぶ高速道路網が発達し、大津まで京都から9分、大阪からは39分と、鉄道のアクセスも便利。国際港湾、国際空港が100km圏内に位置し、県内各地から90分以内で移動可能であり、地理的優位性を保っています。

そして5つ目が、山、川、田から琵琶湖へつながる「豊かな自然」です。

地域に住む我々自身が、こうした地域の魅力を発見・実感し、理解することが、地域づくりには重要だと考えています。

滋賀県が取り組む「5つのイノベーション」

  1. ◆「水・エネルギー・環境」イノベーション
  2. ・国内外の水環境課題の解決を目指す水環境ビジネスの推進
  3. ・再生可能エネルギーの導入促進と、エネルギー関連技術の開発等の促進、スマートコミュニティの推進等
  4. ・持続可能な社会の実現につながる環境関連産業の振興
  1. ◆「医療・健康・福祉」イノベーション
  2. ・医工連携による医療
  3. ・健康・介護機器等の研究開発や新たなサービスの創出
  4. ・医薬農や医福食農の連携による健康増進に資する食品等の開発
  5. ・滋賀ならではのヘルスツーリズムの展開
  6. ・高齢者の衣食住や、子育て支援等、安全
  7. ・安心な暮らしを支える商品・サービスの創出
  1. ◆「高度モノづくり」イノベーション
  2. ・滋賀のモノづくり産業の強みの源泉である、加工組立型業種と基礎素材関連業種を重点にした競争力強化
  3. ・モノづくりとサービス産業等との連携による、製品や技術の高付加価値化
  1. ◆「ふるさと魅力向上」イノベーション
  2. ・滋賀ならではの独自性の高いコンテンツを生み出すクリエイティブ産業の振興
  3. ・地場産業の優れた技術やノウハウを活かした新商品の開発・環境への配慮や高齢化等に対応した建築・住宅等に関連する産業の振興
  4. ・滋賀の資源や素材の魅力を活かした特色あるツーリズムの展開
  5. ・農商工連携や6次産業化の推進による農林水産物の高付加価値化
  1. ◆「商い・おもてなし」イノベーション
  2. ・地域の中での「顔の見える関係」を活かした、女性や高齢者、障がい者等の潜在的なニーズを掘り起こすビジネスの創出
  3. ・魅力ある個店の振興と、中心市街地等でのまちの魅力や特産品など地域固有の資源の発信、地域コミュニティの形成を図るなどの取組の促進
  4. ・空き家等、既存のストックの活用等を通じた新しいビジネスモデルの創出
  5. ・来訪者を温かく迎える人材の育成と、来訪者と居住者の交流を生み出す仕組みづくり

出典:滋賀県産業振興ビジョン(2015年3月)

水環境、医療・健康で新産業を

――地域の「強み」を、産業振興にどうつなげていきますか。

現在、滋賀には、自動車関連やエネルギー・電池関連をはじめとした、グローバルで競争する先端モノづくり産業とともに、地域に根差した地場産業など、さまざまな産業が集積しています。また、木地師や石工から始まるモノづくりの技や、近江商人の「三方よし」の経営理念を引き継ぐ企業が数多く存在することも特徴です。

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