離島のマイナスをブランドに 「日本一高い」パイナップルが誕生

物流コストや気象災害リスクが大きい離島は、農業に適さないと言われる。しかし、そんな過酷な環境を逆手に取り、強い農畜産品ブランドを築いた先駆者が石垣島にいる。マイナスをプラスに変える戦略に迫った。

やえやまファームは離島ならではのブランドを創造した(石垣島川平湾)

沖縄本島から約430kmに位置する石垣島は、八重山諸島の中心地であり、県内で3番目に大きな島。ミシュラン・グリーンガイドで三つ星に選ばれた川平湾や広大なマングローブ、良好なダイビングポイントなどを擁し、観光客にも大人気のエリアである。

この島で、オーガニック・高付加価値型の農業で成長を続けているのが、やえやまファームだ。パイナップルを中心にバナナや島生姜、ハーブ類、さらには豚や牛を生産し、加工や販売も自社で手がける、完全六次産業化の事業を推進している。

厳選した完熟パイナップルは1玉4000-5000円、オーガニックジュースは1本約3500円、ロースハム250グラム約2800円。石垣島内店舗のほか、自社ネットショップ、有名百貨店などに並ぶやえやまファームの商品は驚くほど高いが、飛ぶように売れる。「世界一おいしく、安全で、高価な商品づくり」を、離島という過酷な環境で実現した同社は、六次産業化のモデルケースと言われ、県外からの視察も多い。

離島のマイナスをプラスに

やえやまファーム代表取締役の宮谷茂氏は、もともと大阪で生鮮食品の加工や鮮度保持システムなどに関する会社を複数経営していた。石垣島に移住し、ゼロから農業ビジネスに取り組み始めたのは2002年のことだ。

「1990年代後半、安価な海外製品の台頭の影響などで、石垣からパイナップル加工工場がすべてなくなるという危機がありました。有志が工場再建に取り組み、私もプロジェクトに出資したのですが、結局5年で破綻。そこで3億円の負債を代位弁済し、自分でやってみようと考えたのです」

胸にあったのは、「一番農業をするのに過酷な場所で、日本のベンチマークとなるようなビジネスモデルの構築にチャレンジしたい」という強い想いだ。消費地から遠く、物流コストが高く、気象災害リスクも大きな離島での農業は、当然難しい。しかし食品加工会社を経営し農畜産物の「出口」を熟知する宮谷氏は、離島農業ならではの競争力があると考えていた。

全文を読むには有料プランへのご登録が必要です。

  • 記事本文残り65%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全文読むことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。