海洋に潜む創薬シーズを探せ 日本唯一の海洋生物資源探索会社

生物多様性の宝庫・沖縄に、海洋生物資源から新たな化合物を探求し、製薬会社や化粧品メーカーのイノベーションを支えるベンチャー企業がある。海外からも注目される、沖縄の海洋生物資源の可能性とは。
取材協力・リンカーズ

 

これまで観光資源として活用されてきた沖縄の海は、製薬・化粧品会社のイノベーションの宝庫として存在感を強めている

2015年ノーベル医学生理学賞を受賞した大村智北里大学特別名誉教授は、ゴルフ場の土から化合物エバーメクチンにつながる微生物を発見、これが画期的な感染症特効薬の創造につながった。世界にはまだ数多く、生物資源由来の未知の有機物・化合物が眠っており、創薬や化粧品開発にイノベーションを起こす可能性がある。そうした期待感が高まる中で、製薬会社が生物資源のフロンティアとして注目する場所がある。地球総面積の約7割を占める海洋だ。

「製薬を中心に食品、化粧品、化学などさまざまな分野の企業が、海洋生物資源の利活用に取り組み始めています」と話すのは、日本で唯一の民間海洋生物資源研究開発会社である、オーピーバイオファクトリーの金本昭彦代表取締役。2006年、沖縄県浦添市で創業し、海洋生物資源をサンプリングして膨大なライブラリーを構築、企業の求めるシーズ(化合物)を探索・供給するビジネスで成長するベンチャーだ。

海洋生物資源の宝庫、沖縄

金本氏は鹿児島大学大学院でクラゲやサンゴの生態を研究し、修了後は海洋調査会社に入社、環境アセスメントに関する業務に携わる。自身で海に潜り、海洋生物をサンプリング・調査することもあり、その経験から「海洋生物を活用した新ビジネスに取り組みたい」と考え始めたという。

「陸上の生物資源を集める企業は存在しましたが、海洋生物を対象にした企業は世界でもほとんど例はなく、日本では皆無。一部の大学が海洋生物資源のライブラリー化を進めていましたが、企業の研究開発ニーズに柔軟かつスピード感を持って対応するには大学では限界がありました。そこに起業チャンスを感じました」

金本昭彦 オーピーバイオファクトリー代表取締役

日本は領海および排他的経済水域の面積で世界第6位の海洋国。世界の海に生息する既知種(微生物を含む)23万種のうち約15%が日本の海域に生息する。なかでも亜熱帯域に属する沖縄県は、海洋生物資源の宝庫で、未探索の生物・微生物が多いことは明らかだった。

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