「日本型」多世代共生の仕組み―本郷・ひとつ屋根の下
空き家の急増、老人介護施設の不足、高齢者の孤立。今の日本が抱える問題を地場から解決しようとしているNPOがある。東京・文京区のNPO法人 街ing本郷は、「シニアと若者が共存する」をスローガンに『ひとつ屋根の下プロジェクト』という取り組みを始めた。商店会や町内会の役員が集まったNPOのリーダーは商店街の魚屋の3代目が務めている。本郷の街でシニアと学生という世代を超えた共生はどのように育まれているのだろう。
地域課題と人をつなげるマッチング
各地域で「シェア」できる住居が注目されている。都内では若者向けだけでなく、超高齢社会問題の対策のひとつとして「高齢者向けのシェアハウス」も増え、孤立する高齢者が人とつながる場にもなっている。
世界ではフランスがホームシェアの先進地と言われ、「多世代共生型シェアハウス」が進む。一人暮らしに不安を感じた高齢者は、学生に空き部屋を安く貸す。学生は低賃料で住める代わりに、高齢者の手助けもする。互いにメリットがある仕組みで、ヨーロッパでは広がりつつある。日本でも同様の取り組みを始める地域が出てきた。
東京・文京区では、「ひとつ屋根の下プロジェクト」という名称で、多世代共生プロジェクトを行っている。活動を進めるのはNPO法人の「街ing 本郷」。『元気ある街づくり』を目指し、本郷地区の商店会や町内会の役員が中心となって立ち上げたNPOだ。代表を務める長谷川大氏は、商店街の魚屋の3代目の店主である。
「本郷を元気にしたい、そう思って立ち上げました。地域に根づき、地域課題の解決を行っています。そうは言っても、ほとんどのメンバーは生業となる本業があります。だから、人と人をつなぐコーディネート『マッチング(街ing)』が中心です」
地域防災力向上のための「本郷防災アクション企画」や、本郷の商店街をもり立てる「本郷百貨店」などのプロジェクトから、また公園の掃除、道路に花を植える活動まで、地域で依頼される仕事はさまざま。その依頼をアドバイスできる専門家や、活動してくれるボランティア、学生につなげている。
「商店街や町内会の人は、地域の人間をよく知っている。だからつなげる仕事は得意なんです。その仕組みをつくったことがNPOの大きな成果だと思います」
本郷の5つの商店街が集まって生まれた「本郷百貨店」のプロジェクトが、2015年にグッドデザイン賞を受賞したことも記憶に新しい。「個性溢れる店主というブランドが揃う百貨店」というコンセプトのもと、商品やサービスの紹介はせず、店主自身の想いやお店の背景を中心に紹介し、店主の人柄を伝えて人間味溢れる商店街の魅力を発信する3ヶ月間の個性的なイベントであった。
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