温泉のない道後温泉旅館がヒット 元ニート社長の新規事業の視点

旅館経営から小売業まで、愛媛の地域資源を活かして様々な事業を手掛けてきたエイトワン。大藪代表は新規事業成功の秘訣は“人”だと断言する。

タオルバーにずらりとカラフルな今治タオルが並ぶ、『伊織』松山店。

“外湯を楽しむ宿”がコンセプトの『道後やや』は、ビジネス客という新たな客層を呼び込むことに成功

宇和島鯛めしの『丸水』は、今年9月に東京にも進出

今治タオルの専門店『伊織』や砥部焼食器ブランドの『白青』、道後旅館『道後夢蔵』『道後やや』、宇和島鯛めしの店『丸水』、愛媛みかん加工品のリアル・オンラインショップ『10(TEN)』――。様々な分野の事業を立ち上げ、成功させている企業が愛媛県松山市のエイトワンだ。従業員は約250人。多岐にわたる事業の共通点は、愛媛の地域資源を発掘し、ブランドとして磨き上げ、全国に価値を伝えている点にある。

エイトワン代表取締役の大籔崇氏は36歳。元投資家であり、さらに遡ればパチンコ好きのニートだったこともある異色のビジネスマンである。今や10の子会社を束ねる経営者だが、その資本の元はパチンコで稼いだ何百万円かのお金だったという。「そのお金を元に株式投資を始めました。一度資金が尽きかけたこともありましたが、最終的には15億円まで増やすことができました」

若くして大きな富を得た大籔氏。不動産投資による賃貸収入もあり、すでに投資家として盤石の状態であった。しかし、投資家として生きていく道は選ばなかった。

「一生遊んで暮らせるだけのお金がありましたし、好きな物も買えてそれなりに楽しかったのですが、どこか虚しさがありました。楽しいけれど、充実していない。このままだと、ただ消費するだけの人生で、自分が何のために生まれてきたのか分からなくなるような気がして」

大籔 崇(エイトワン 代表取締役)

逆転の発想から生まれた温泉のない道後温泉旅館

そんな悩みを抱えていた2008年、道後温泉界隈の宿泊業への参入話が巡ってきた。当時は宿泊業など全くの無知で、素人同然。それでも大籔氏は投資家を辞め、ホテル経営に乗り出す。

「道後温泉は愛媛県最大の観光スポット。道後をさらに盛り上げて、観光客を増やすことができれば、愛媛にとって大きなプラスになりますよね。育ててもらった愛媛に貢献できるのであればと、チャレンジしました」

しかし、買収して営業を引き継いだ温泉宿『夢蔵』は当時経営難で青息吐息な状態。道後温泉本館のすぐ隣にありながら、“愛媛っぽさ”が全く感じられない施設だったという。

「それが集客できない一番の原因でした。そこで、料理に使う食材はほとんど全て愛媛産のものに変えて、客室の設備やアメニティからも愛媛を感じられるように工夫しました」

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