2015年3月号
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産学連携で実現する先端医療

東京大学が目指す22世紀医療

髙戸 毅(東京大学大学院医学系研究科 外科学専攻)

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東京大学医学部附属病院の産学連携の拠点が22世紀医療センターである。寄付講座や社会連携講座を通じて企業とともに新たな臨床医学や医療関連サービスを研究開発し、社会貢献を目指している。

22世紀医療センターでの実験風景

東京大学医学部附属病院では、新たな臨床医学や医療関連サービの研究と開発を目的に、22世紀医療センターが発足した。構想は2002年に立ち上がり、2003年の国立大学法人法の制定に伴い、翌2004年4月より国立大学法人東京大学としてスタートすると、同年6月より寄付講座が始まった。2006年に正式にセンターとして発足され、医学部附属病院に新設された中央診療棟(2)に拠点が設けられた。

22世紀医療センターの大きな役割が先端医療の実用化と社会還元だ。そのために重要なのが産学連携による臨床研究であり、その橋渡し役を担っている。

中心となるのが寄付講座だ。70社以上の企業と連携しながら研究活動を行っている。主に製薬会社や医療機器会社だが、物流サービス会社やデータ通信サービス会社、損害保険会社等様々な事業領域の企業との寄付講座を行いながら、文字通り22世紀医療の方向性を見出そうとしている。

公益性の高い課題に関しては、社会連携講座としてより密接な形で共同研究を行っている。現在取り組んでいる健康空間情報学講座では、NTTドコモと共同でモバイルICTを活用した新たな健康情報空間を構築しようとしている。慢性疾患や生活習慣病の自己管理をはじめ救急医療、遠隔医療、在宅医療、介護の新たなサービスにつながることが期待されている。

また、定期的に22世紀医療センター主催のシンポジウムを開催しながら研究成果を対外的に報告している。

研究成果の事業化を橋渡しする「TR」

センター長を務める髙戸毅氏が推し進めているのが、TR(トランスレーショナル・リサーチ)だ。各研究室で蓄積された基礎研究の成果を統合し、迅速に臨床研究へ橋渡しする。また、最先端の医療の研究成果を製品化するため、企業との橋渡しを推し進めている。

髙戸 毅(東京大学大学院医学系研究科 外科学専攻 感覚・運動機能医学講座、口腔外科学分野 教授医学部付属病院22世紀医療センター センター長)

「寄付講座や社会貢献講座を中心にTRをしようというのが私たちの構想です。基礎研究から臨床研究を経て、知的財産権を取得し、薬事等を世の中に出していきます。最終的には、企業に事業委託出来るまでにしていきたいです」

現在(2014年12月)、22世紀医療センターでは15の寄付講座、1つの社会連携講座、そして2つのプロジェクトが進行している。大学発ベンチャーのサポートも重要な役割だ。ベンチャーだけで薬事承認を得るのは非常に難しい。そのため、経験ある企業との橋渡し役も行っている。

日本最高レベルの知識が集まる東京大学ではあるが、22世紀医療センターは決して恵まれた環境ばかりではないという。

「22世紀医療センターは良い研究母体で優秀な人が多いのですが、各講座の規模はどれも小さいですね。各講座の年間予算を考えると、雇用する人件費は2~3人分が精一杯です。これでも初期に比べたら随分と進歩しましたが、諸外国に比べるとかなり小規模ですね」

各講座は3~5年単位の契約なので、親企業やスポンサーの継続・更新を得るためには、実質2年程度で結果を示さなければいけないという。しかし、とりわけ医学は先の見えにくい分野だ。日々、マウスによる実験の成功が発表されるが、これを実際に臨床、さらには商品化するにはかなりの時間と資金が必要だ。現実に挫折も多い。長く良いパートナーを見つけるのは難しいという。

「寄付講座という概念が生まれ、研究が進んだのは事実ですが、体制的には脆弱ですね。身分の保障がありませんので、長いスパンでの研究が難しい。早い時期に結果を出していかないと」企業側の理解も必要だが、医師に関しても本来は患者を救うという所にミッションがあるため、事業化して利益を生もうという発想にはなりにくいし、目を向ける時間もない。

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