2014年12月号

地方創生 2つの輪

地場ビジネスコンテストで地域を「再発見」

井上考二(日本政策金融公庫 総合研究所 主任研究員)、立見大作(日本政策金融公庫 創業支援部 上席グループリーダー代理)

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近年、全国各地で数多く開催されているビジネスプランコンテスト。しかし、それを地域の活性化につなげるためには、さまざまな課題が存在する。今、コンテストのあり方にも、イノベーションが求められている。

日本政策金融公庫では、高校生を対象にしたコンテストを開催。

今、全国各地でビジネスプランコンテストが乱立している。中小企業庁による中小企業・小規模事業者の支援サイト「ミラサポ」に掲載されているだけでも、その数は140以上にものぼる。いわば“コンテスト・バブル”の状態だ。

コンテストの主催者は、自治体や公的機関、大学などの教育機関、民間企業などさまざま。自治体、公的機関が開催するコンテストは、地元の起業家を育成し、新たな事業を生み出して地域振興につなげることを目的としたものが多い。しかし、継続が難しくなり、一過性のイベントで終わってしまうコンテストがあるのも現実だ。

日本政策金融公庫の井上考二・主任研究員は、「新規性のある事業を生み出すのは大変なこと。コンテストを毎年続ければ、当然、応募者は減少しがちです」と話す。

井上考二 日本政策金融公庫総合研究所 主任研究員

地場のコンテストでは、応募者を地元に限定にしているところも多い。しかし、三鷹市や川崎市のコンテストなど、応募資格に地域的な制限を設けず、幅広い応募者を集めているところもある。

「新規性があり有望な事業であればあるほど、ニーズは地域外にも存在します。また、かつてコンテストの動向を調査した際には、地元で起業した受賞者が、結果的には首都圏にオフィスを移転していたケースも見られました」

コンテストが、地域振興にどれだけ貢献したのかを測るのは難しい。井上氏は、雇用や税収といった直接的な効果だけでなく、「間接的な効果」にも目を向けることを提案する。

「受賞者が地元企業の取引先になれば、その利益は地域にも還元されることになります。即効性のある成果を求めるだけでなく、長期の視点で間接的な効果を把握する仕組みも必要でしょう」

最終審査会では、高校生が多数の聴衆を前に事業プランをプレゼン。著名な起業家や大学教授、経産省の担当者が審査員を務め、グランプリを決定する

主催者の連携に新たな可能性

井上氏によると、受賞後の支援メニューも大切だという。

「受賞したプランが、最終的にどこまで成長したのかが重要です。受賞後の支援を強化することも必要です」

特にハードよりもソフト面の支援が重要で、税務など専門家による支援や広報のサポート、ビジネスマッチングなど、強みが発揮しやすくなるような状況をつくり出すことが必要だ。

さらに井上氏は「コンテストの認知度を高め、イベントとしてもっと盛り上げていくことも重要」と語る。

「たとえば、複数の自治体が連携して一つのコンテストを実施したりすれば、大きなコンテストを企画することも可能になると思います。今、各自治体がバラバラに動き、それぞれでコンテストを開催していますが、視野を広げて連携していけば、スケールの大きい新しいコンテストができるかもしれません」

地域の経済に大きなインパクトを与え、日本を変えていく起業家を生み出すためには、主催者側にも新たな試みに挑戦するベンチャースピリットが求められる。

コンテストは絶好の「教育の場」

また、コンテストを企画するにあたり、事業化を目的とするだけでなく、そこに教育の観点を加えることで、応募者の裾野を広げることもできる。

「何を目的にコンテストを開催するのか。それを明確にすることが必要です」(井上氏)

まずは教育を目的に、ビジネスの経験が乏しい人にも門戸を開いて多数の応募者を集め、そこから事業化を目的にしたフェーズに移行させていくのも戦略の一つなのだ。

日本政策金融公庫では、高校生を対象にしたコンテスト「創造力、無限大∞ 高校生ビジネスプラン・グランプリ」を開催している。高校生を対象にした全国レベルでのコンテストは珍しく、第2回目の今年は、エントリー高校数207校、エントリー件数1717件にのぼった。

コンテストを担当する日本政策金融公庫 創業支援部の立見大作氏は、「商業・農業系の高校は特に、地域の資源を活かして特産品を開発し、地域活性化につなげようというプランが多い。コンテストを通じ、若い人が地元に目を向けることが、地元再発掘のきっかけにもなります」と話す。

誰に何をどうやって売ればいいのか。本気で考える中で、足下にある地元産品の価値に気づき、その新しい売り出し方を考案する。ビジネスプランを考えなければならない状況に直面することで、初めて経験できることは多い。

今年6月に閣議決定された「日本再興戦略改定2014」には、起業家教育の推進や創業者マインドの向上が盛り込まれている。

「今、起業家教育が求められています。我々はビジネスプランの作成をサポートする出張授業も展開しており、創業融資で培ってきたノウハウを教育にも還元し、日本を支える人材の育成につなげたい」(立見氏)

立見大作 日本政策金融公庫創業支援部 上席グループリーダー代理

高校生の場合、教育が主で実際の起業にまでは至らないのが普通だ。それでも、コンテストの中で地域の良さを理解し、地域の人々とつながった経験は残る。それが、地元にとどまる若者を増やしたり、将来的なUターンにつながる可能性もある。

また、身近な環境に起業家が存在しない地方において、「起業」という選択肢を“自分ごと”として実感できる機会は、自身のキャリアを考えるうえでも有用だ。地域のコンテストは、その活用の仕方次第で、さまざまな可能性を秘めている。

出典:日本政策金融公庫・井上考二氏・作成資料

 

日本を変えるコンテストを

今、全国各地で地場のビジネスプランコンテストが行われているが、重要なのは、コンテストを開催するだけで終わらせないこと。目的は地域を変えること、日本を変えることであり、コンテストで生み出された成果を磨き続け、より良いものにしていくことが大切になる。

また、分野の異なる事業プランを同じ基準で測るのは難しい。基準を明確にしていくことも必要だ。

そしてコンテストは、審査員となる有識者と地域経済を結ぶ機会としても活用できる。

地方創生のアイデア

月刊事業構想では、「地域未来構想  プロジェクトニッポン」と題して、毎号、都道府県特集を組んでいます。政府の重要政策の一つに地方創生が掲げられていますが、そのヒントとなるアイデアが満載です。参考になれば幸いです。

※バックナンバーには、そのほかの都道府県も掲載されております。是非ご一読ください。

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